「知らないと損する」から始める

【横川】今回の本を出したのは、同世代の人たちに「お金のことを考えないとヤバい!」という意識をもってもらいたかったからです。すごく基本的な話もいれつつ厳しいデータを示したのは、現実を知るのが大切というのが第一。それに「現状を変えるために、自分で動いてほしい」という気持ちがあったからです。行動経済学で考えると、誰かに行動を促すにはマイナスの情報が有効なんです。「知っていると得する」よりも、「知らないと損する」のほうが人は動くから。

横川楓『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)

【高井】金額が同じなら、利益よりも損失のほうが2倍の心理的インパクトがあると言われますよね。私が感心したのは、図表やグラフはしっかりしたデータ集で、丁寧に見れば「リアル」がしっかり分かるようになっているけど、本文は専門用語は極力避けて徹底的に分かりやすくしているバランスの取り方です。若い人に経済への興味を持ってもらうのって、本当に難しい。横川さんは同世代として語りかけられるのが強い。同じことをオジサンが書くとお説教になってしまうので、私の『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』(インプレス)は、中学生2人が主人公の青春小説という形にして若い人でも読みやすいよう、間口を広げています。

少しの知識で差が出る“お金”

【横川】私、経済やお金の入門書の新刊は一通りチェックしているんですけど、『おカネの教室』は読んですぐ「これ、すごくいい!」と思いました。小説の形でお金や経済、社会の仕組みをわかりやすく解説してあって苦手な人でも読みやすい。生徒2人の何とも言えない関係がまた良くて、主人公の男の子を恋愛的な意味で「がんばって!」と応援したくなるし、先生も名言だらけのいいキャラで。子供向けに見えるけど、絶対大人も読むべき一冊だなって。

【高井】この本、元はわが家の家庭内連載小説だったんです。私、娘が3人いまして、経済や金融のことを知ってもらおうと書いたものが、いろいろあって本になっちゃった。日本だとお金のことをちゃんと学校で教えないから、ほとんどの人が考え方の軸や基礎知識がないまま社会に出てしまう。でも、それって、ルールも知らないのにギャンブルに参加するみたいなもので、本当にヤバい。お金には、イージーに手が出せるのに取り返しのつかない失敗につながる落とし穴があるから。保証人制度とか、『お金のリアル』で紹介されていたクレジットカードのリボ払いとか。ちょっと知識があるかないかで、ものすごい差が出る。