製薬マネーが薬価算定委員の謝礼金に

薬価がブラック・ボックスのなかで適当に決められる可能性があるなら、価格決定の関係者が、裁量で高い薬価をつけて製薬会社に利益誘導を行ってしまうことはないのでしょうか。

前述のように、薬価算定組織の委員は厚生労働省のホームページ上では公開されていません。このため、探査報道を専門に行うジャーナリストグループのワセダクロニクルが、情報公開請求を行いました。

その結果は、2018年6月に「【特集】製薬マネーと医師」として報道されています。それによると、薬価算定組織は、本委員11名と医学薬学の専門委員42名で構成されていることが明らかになりました。しかも、驚くべきことに、製薬会社から委員へ多額の謝金が提供されていることも分かりました。

製薬会社の売上高に直結する薬価を決定するのがこの政府組織ですが、製薬会社からのお金が委員個人へ提供されていたのです。

1千万円を超える副収入も

調査報道を行うNPO法人のワセダクロニクルと私が所属する医療ガバナンス研究所が共同で、製薬会社から医師個人へ提供された2016年度分のお金をデータベース化しています。それを元に、薬価算定組織の本委員11名について確認したところ、委員長を含む3名の委員が1100万円前後、2名が380万円前後を製薬会社から副収入として受け取っていたのです。

この5名を含め、計9名の医学部関連の委員すべてが、製薬会社からのお金を受け取っていました。一方、歯学部の委員2名は受け取りがありませんでした。このようなデータは、これまでは情報開示請求を行っても入手できず、我々のデータベースで初めて明らかになった事実です。

もちろん、製薬会社からの薬価算定への影響に配慮し、厚生労働省ではルールが定められています。過去3年度のうち、審議に関係する企業から50万円を超える金銭の受け取りがあった年度は議決に参加できず、500万円以上なら審議にも参加できないと決められています。このようなルールを設けるくらいなら、製薬会社からの受け取りがない委員を初めから選べないのか、という疑問は出てきます。

ワセダクロニクルのインタビューに対し、薬価算定組織の委員長は、「組織は権威も何もない」と答え、意図的な薬価の吊り上げは否定しています。その上で、実質上は厚生労働省の官僚が主導して薬価を決めている内情を示唆したことが報道されました。