黙っているだけでも製薬会社はもうかる

また、薬に関する委員会があからさまな便宜を図らなくても、製薬会社にとっては会議でだまっていてくれるだけでも助かる理由があります。審議会は全会一致で議決されることが原則となっています。誰か一人でも反対すると会議がやり直しになり、最低数か月遅れてしまうことになります。

谷本哲也『知ってはいけない薬のカラクリ』(小学館新書)

薬は特許期間が定められているため、数か月の違いで数十億円の利益が簡単に吹き飛んでしまうこともあります。その意味では、薬に関係する政府委員は、製薬会社の命運を左右する重い職務権限を有しているとも解釈されるのです。

新規医薬品の承認とか薬価算定とか薬の話は専門性が高く、分かりにくいと思われるでしょう。しかし、たとえてみれば、東京オリンピックの土建工事を請け負う会社や価格を決める役人が、講演会だのなんだのにしょっちゅう呼ばれ、謝金をもらい懇親会での情報交換という名前の接待漬けにされている状況と同じなのです。

さらに言えば、野球の審判がルール解説の謝金付き講演会を、巨人軍からばかり頼まれているようなものです。広島カープや阪神タイガースのファンは(ファンでなくても)どう思うでしょうか。

谷本哲也(たにもと・てつや)
内科医
1972年生まれ。九州大学医学部卒。探査ジャーナリズムNGO「ワセダクロニクル」とNPO法人「医療ガバナンス研究所」の共同プロジェクトでつくったデータベース「製薬会社と医師」に参加。著書は『生涯論文!忙しい臨床医でもできる英語論文アクセプトまでの道のり』(金芳堂)。Twitterでは薬にまつわる質問を募集している。Twitter:@med_karakuri
(写真=iStock.com)
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