「手づかみ」のデータがAIの進化を後押し
文字どおり手づかみの膨大なデータは、AIの進化を大きく後押しするだろう。
私たちはみんな、生まれたときから、「手」で触り、知識を蓄え、成長してきた。AIを、ヒトへ近づけるというなら、同じ順序の成長を課していかねばいけない。ヒトへの進化に、近道はないのだ。リアルの世界に出て、痛みを得たり「手」を汚したりしなければ、大事なことはつかめない。その真理はビジネスと似ている。
今後、AIをより人間に役立つものにするためには、AIとリアル社会とのインタラクションが何より重要になる。インタラクションをバーチャルな世界で行わせる研究も進んでいるが、リアル社会と行った方が、進化は速いと考えられる。性能が高まるという意味ではなく、人間のやっていること、やりたいことにより近づけるという点においてだ。
その結果、より人間に役立つ「AIロボット」の開発にもつながる。AIの身体性の課題が解決され、研究が進めば、AI自身が進化するだけでなく、身体性を備えたAIロボットの開発も本格的に進むだろう。
面倒な家事は全部AIロボットに任せたらいい
「手」を自由に使えるロボットが現れたら、本当に便利になる。
家の片づけをしてくれると、すごくありがたい。散らかした後の片づけというのは、人間の作業のなかで、かなりストレス上位にある。料理ロボットや大工ロボットより、片づけロボットの方が、格段に需要は高いだろう。
本を拾って元の本棚に戻したり、脱ぎ散らかした服を畳んでクローゼットにしまったり、食べ残しをゴミ箱に分別して捨てたりするなどの「手作業」は、いまのAIロボットには、まだまだできない。
しかし、こうした面倒な仕事や家事は、人間が一番ロボットに代替させたい仕事だ。需要が高ければ、予算をかけた研究開発が進み、多くの企業も参入していく。開発は急ピッチで進むだろう。
身近な例で言えば、全自動衣類折り畳み機「laundroid(ランドロイド)」が注目を集めている。家事のなかで、洗濯物を畳むことほど面倒なことはない。畳み方なんてすべてパターンだから、ディープラーニングで簡単に解けるし、ロボットの方が人間よりもきれいに早く、衣類を畳める。そういう面倒な家事は、全部AIロボットに任せてしまったらいいのだ。