経費精算やプレゼン資料の準備も丸投げ

仕事上の「雑務」の丸投げもできる。

経費の精算や、備品の整理に資料の仕分け、大量の書類のはんこ押し、プレゼン資料や会議の下準備……など、面倒だけど、いまは人がやらざるを得ない仕事がオフィスにはゴロゴロある。こうした雑務を、AIロボットがすべて引き受けてくれたら、どれほど楽になるだろう。

極論すれば、開けた扉を閉めるとか、出したものを片づけるぐらいのことは、はっきり言って、誰だってやりたくはないはずだ。そんなものに使われる数秒だって、何十年間も毎日のように積み重ねれば、膨大な自分の時間を失っていることに気づくはずだ。捻出された時間で、もっと自分のやりたいことに没頭したらいい。

「手」の技術開発が追いつかない場合、「片づけハウス」や「片づけオフィス」の登場が先になる場合も考えられるだろう。

最近はさまざまな「AI家電」に加え、「AI住宅」も研究されている。家やオフィス自体がAIロボットとなり、家電や家具、建具などと連動し、あらゆることを自動制御する可能性は十分にある。

家具や家電が「黙々と仕事をこなす」ように

少し前の話だが、2016年に日産自動車が「手を叩けば自動で定位置に戻る椅子」を開発した。日産が研究している自動運転車の技術を応用して、つくられたものだという。動画ニュースなどで、ご覧になった人もいるだろう。雑然と椅子が並べられた会議室で、その場にいる人が手を叩くと、それぞれの椅子が、スムーズな動きで、元にあった机の下の定位置に戻っていくのだ。

この椅子にどれくらいの需要があるかどうかはさておき、技術的にAIオフィスの研究がどんどん進んでいるということだ。家具や家電は、いずれ人がまったく手を触れることなく、黙々と仕事をこなし、静かに自分で元の位置に戻っていく、非常に利口な道具となりえるだろう。

とにかく、いまAIに大事なのは、「手」なのだ。現在のAIロボットに高性能の「手」が搭載されたら、IT革命やいまのAI革命どころではない、次世代の一大産業革命が起きるのではないか。それは社会構造のあり方や人間の価値観を、根幹から変えてしまう可能性すらあるのではないかと、私は想像している。