必要なのは調停の専門知識

あなたの紛争にはA社製品の化学変化とされるものが関わっているため、同僚は地元の大学の化学部に連絡してみるようアドバイスしてきた。あなたは結局、A教授と話をすることに。この化学者は調停人を務めた経験はないが、化粧品業界で働いたことがあり、製品の化学変化がどちらの会社の責任かを判定することで、紛争解決を手助けできると自信を持っている。

あなたはまた、プロの調停人を派遣してくれる地元の紛争解決会社の存在も知る。この会社の社長は、当社には製品の化学的属性にからんだ紛争を扱った経験のある者はいないと言う。

調停人としてどちらをR社に提案すればよいのだろう。化学の専門家だが調停は初めてのA教授か、化学や化粧品に関する知識のない調停のプロか。

この紛争を解決するためにA教授を雇ったとしよう。A教授が製品の化学変化をR社の責任と判定したら、R社はおそらく、A教授は世間で言われているほど有能な化学者ではないと結論づけるだろう。A教授が責任はA社にあると断定したら、A社もおそらく同じ結論を出すだろう。

調停人の意見には拘束力がないので、2つの会社はスタート地点──それぞれが自分たちは正しく、相手が間違っていると確信している状態──に戻ることになる。

2人の人物、もしくは2つの組織が、どちらが正しいかを判定することで紛争を解決しようとすると、もめることが多い。多くの紛争が結局は裁判に持ち込まれるのはそのためだ。