「人材検索エンジン」という脅威
今後、私たちの信用残高は意識しようとしまいとさまざまなところに記録されていく。ブログはもはや個人の履歴書と化すだろうし、ツイッターのフォロワー数、電子出版での評判などは一つの貨幣価値となるだろう。転職活動ではレファレンス(裏付け)を取られるのが当たり前になり、信用のある人ほど様々な場面で恩恵が受けられるようになる。今はその過渡期なので多少の歪さは否めない。
たとえば単純にフォロワー数が多い人が富を手にする「フォロワー経済」に対して、疑問符を持つ人もいるだろう。「目立った者勝ち」の経済は信用主義経済の目指すところではない。
ただ近い将来、こうした状況はおそらくグーグルなどが変えるだろう。現時点のサーチエンジンは、フォロワーが多い人ほどページランクの上位に出る単純な仕組みにすぎないが、もしグーグルが特定の個人とのつながりや専門性などをデータとして取り込み、その信用性を算出する仕組みにアルゴリズムを入れ替えると、「量」だけではなく「質」が問われるようになる。その結果、「フォロワー経済の効果は薄まり、その人の本質的な信用が検索結果として現れてくるだろう。
「情報検索エンジン」ならぬ、「人材検索エンジン」の登場だ。
それはフリーランスや零細企業の経営者にとっては脅威でもある。もし「M&A コンサル」と検索して自分が1ページ目に出てこなかったら仕事がなくなってしまうかもしれない。だから大切なのは個人間の信用である。
縁は円より強し。これは標語ではなく、事実だ。
事業家・思想家
早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラミング事業をはじめとする複数の事業、会社を経営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。