「売り上げを5倍に!」川淵三郎からの無茶ぶり
【田原】葦原さんが入ったときは、もうリーグは1つになっていたんですよね。葦原さんの仕事は何ですか?
【葦原】まず川淵から「売り上げを20億つくれ」と言われました。ちなみに前年の2つのリーグの売り上げは4億円。Jリーグは準備から開幕まで5年でしたが、Bリーグは1年。5年かかるものを1年でやるだけでも難しいのに、売り上げを5倍にしろだなんて、いったいこの人は何を言っているのかと思いました(笑)。
【田原】そんなの無茶苦茶じゃない!?
【葦原】こちらも無茶するしかないので、それまで数千万円だったスポンサーのパッケージを10倍の値段で売りに行きました。当然、相手にされず、10人中9人の方には笑われました。でも、本質をわかってくださる方が1人でもいればと信じて回り続けました。
【田原】結果はどうでした?
【葦原】勝算も何もなかったですが、結果的に多くの方にご理解いただき、初年度は売り上げが約50億円になりました。もちろん私だけの力ではありません。大河やリーグスタッフ、クラブの方々、みんなのおかげです。
【田原】川淵さんの要求のさらに上を行ったわけですか。ちなみに開幕戦は盛り上がったんですか?
【葦原】開幕戦のカードは、アルバルク東京対琉球ゴールデンキングスでした。イメージは、1993年のJリーグ。一試合だけ先出しして行い、注目してもらう戦略です。具体的にやったのはLEDコート。ディスプレイをコート一面に敷き詰めて、選手が得点を決めるたびに選手の顔をコートに映します。まさにスポーツのショー。いままでにない雰囲気で盛り上がったと思います。
【田原】お客さんはどのくらい入りました?
【葦原】会場は代々木第一体育館。1万人が収容の会場が即完売でした。
【田原】すごいね! ただ、大事なのはシーズンを通してお客が入るかどうかですよね。観客動員を増やすために工夫したことはありますか?
【葦原】入場者数を増やすのに飛び道具はありません。大事なのはクラブ間のナレッジシェア。こうやったら動員が増えた、減ったという細かな施策の結果をクラブ間で共有するしかない。あとはデジタルシフトです。スマホで1~2クリックでチケットが買えて、アリーナに行けばサッと入れるという環境を整えました。日本の野球は球団ごとの販売しかありませんが、Bリーグのサイトからならどのチームの試合も購入できます。これらの仕組みは、アメリカのものを参考にしています。