売り上げ目標のない人事評価制度

【田原】売り上げ目標がないと言っていたけど、評価はどうしているのですか? 普通の会社は目標管理で、上司との面談で目標を決めますが。

【新居】評価は数値目標ではなく貢献度で決まります。「業務遂行にどれだけ貢献したのか」「チームの一員としてどれだけ貢献したか」の二軸で評価します。だから売り上げをあげていなくても、チームの雰囲気をよくしている人の評価が高くなることもあります。ただこの二軸でもまた完全ではありません。現在、貢献度をさらに因数分解して評価に取り込むべく、ワーキンググループをつくって研究を続けています。

【田原】制度改革も、新居さんのトップダウンでやるわけじゃないのね。

【新居】はい。手を挙げた社員たちで話し合って、まとまればみんなの前で発表。みんなが「いいね」といえば評価制度が変わります。

【田原】みんなで話し合って、新居さんが社長を降ろされることもある?

【新居】ありえますよ(笑)。インターネットの領域でCEOをやるには、若さと体力が必要。私自身、できてあと10年かなと。みんなが「新居は年寄りでもうダメだ」と感じたら、三行半をつきつけられるかもしれない。そうなると寂しいので、なるべくいわれる前に自分から辞めようと思ってますが(笑)。

【田原】いま自社でやっている取り組みを他社に導入するコンサルティングはやらないのですか? 社員のやる気が低くて困っている企業は多いと思うけど。

【新居】可能性はなくはないですが、私個人はコンサルティングサービスにあまり価値を感じてないのです。そもそも会社組織は働く人たち自身がつくっていくべきもの。私たちのやり方が正しいとは限らないし、ロールモデルの1つとして伝えていければと思っています。

田原さんから新居さんへのメッセージ

新居さんの話を聞いて、僕は昔取材に行ったグーグルを思い出しましたグーグルには「業務時間のうち20%を自分の好きなことに使っていい」というルールがあって、エンジニアたちが生き生きと働いていた社員のエンゲージメントを高めるには、指示命令型ではなく、社員が裁量を持って働ける環境が必要グーグルは、まさにそうした会社でした

グーグルの働き方を多くの企業がマネしたように、日本企業がアトラエの働き方をマネするようになれば、サラリーマンの表情はもっと明るくなるかもしれません。

田原総一朗の遺言:サラリーマンの“表情”を変えろ

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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