「人生を日産復活にささげた」とゴーン氏

続けて産経社説は指摘する。

「勾留理由の開示手続きは、裁判所が容疑者や被告の勾留を認めた理由を公開の法廷で説明する手続きで、通常は、裁判所が証拠隠滅や逃亡の可能性を指摘するのみである。裁判官が勾留の是非を判断する場ではない」

これもその通りである。開示手続きで拘留が中止されることはまずない。

産経社説は「ゴーン容疑者は意見陳述で『人生の20年を日産の復活にささげてきた』と自負を語り、会社法違反(特別背任)の再逮捕容疑について、その一つ一つを否定した」とも書く。

「容疑者が外国人であれ、著名な経営者であれ、ひるむな」

産経社説はその後半で、海外メディアの批判にも言及しながら持論を訴える。

「ゴーン容疑者の逮捕、長期勾留に対しては、主に海外のメディアから強い批判がある。勾留理由開示手続きは、そうした海外世論に訴える目的もあったのだろ」
「東京地検はこれまで、こうした批判に対し、『国ごとにそれぞれの制度がある。自分の国と違うからと簡単に批判するのはいかがなものか』と反論してきた」
「国内法に抵触する容疑があれば捜査を進めるのは当然である。勾留についても手続きが適正なものであれば、批判にひるんではなるまい。容疑者が外国人であれ、著名な経営者であれ、それは同様である。真実追求に資する捜査と公判を求めたい」

特捜部はおごることなく、謙虚に事実を示すべき

いずれも沙鴎一歩の主張に近い。だが、「外国人であれ、経営者であれ、ひるんではならない」とまで特捜部をむやみに擁護するのは、いかがなものだろうか。

東京地検特捜部の検事たちは、聖人君主ではない。裏を返せば、自らの捜査に過信する傾向がある。そこが特捜部の最大の弱点なのだ。

産経社説は12月22日付でも、「東京地検特捜部が勝負に打って出たということだろう。法律違反の疑いがあれば、捜査に全力を尽くすのは当然である。海外メディアの批判などにひるむ必要はない」と書いている。これは12月25日付の記事(「ゴーン氏の拘留延長を続ける特捜部の意地」)で触れた。

今回の事件は海外から注目されている。特捜部はおごることなく、真実を明らかにしようとする謙虚な姿勢をみせるべきだ。その姿勢があって初めて海外からの批判を払拭できる。産経社説はその点を指摘すべきだった。

(写真=時事通信フォト)
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