「空気感染」はなぜ起こる

ノロウイルスの感染ルートは口から体内に入る「経口感染」だが、2006年12月に発生した東京都・豊島区Mホテルの集団ノロ感染を機に、「空気感染」が注目されるようになった。

空気感染は、乾燥した状態でふわふわ空気中を漂う病原体の微粒子を直接、吸い込む、あるいは食品に落下、付着した病原体を食べることで生じる。乾燥したノロウイルスは、20度の室温で3~4週間、4度程度の低温状態では2カ月以上生存するといわれている。

鳥居院長は「Mホテルのケースはカーペットに付着した嘔吐物の処理が不十分で、乾燥したウイルスが舞い上がり、汚染から数日間たっても換気口を介して感染が拡大したと推測されます」。つまり、嘔吐物を適切に処理しておかないと感染リスクが長期間残り、感染が広がる可能性があるわけだ。

JRでは吐瀉物の処理・凝固剤を使用

このためMホテルの一件以降、大勢の人が利用する公共施設や交通機関では吐瀉物を介した感染リスクを踏まえた清掃を徹底するようになった。

JR東日本では、冒頭のようなアクシデントで運行車両や乗客から連絡があった場合、運行を管理する部署を通じて付近の駅に連絡が入り、近くの駅に停車して速やかに清掃が行われる。

手順としては、まず処理剤で固まった嘔吐物をほうきで集めた後、床面を雑巾で拭き取る。さらにノロウイルスに有効な濃度の次亜塩素酸ナトリウムをしみこませたタオルで、嘔吐物が付着した床面とその付近、および嘔吐した人が触ったと見なされる範囲の拭き取りを行うという。

「かつては『おがくず』で嘔吐物を覆い、処理していましたが、最近は除菌・消臭成分を配合した嘔吐物の処理・凝固剤を使用しています。この時期は各駅などで対応方法を再度周知して、適切に処理できるようにしています」(JR東日本・広報部)