感染したら「脱水症状」に注意

もし感染したらどうなるか。ノロウイルスの場合、感染からウイルスが体内で増殖し、症状がでるまでの潜伏期間は2、3日。この間、かぜの引き始めのような軽い不調を感じることもあるが、大きな影響はない。しかしその後、突然の嘔吐や水のような激しい下痢が出現し、トイレにこもりっきりという状態になる。

前述の鳥居院長は「感染したときは、脱水症状に陥らないよう経口補水液などで水分をこまめにとり、安静にしていましょう」と話す。

「発症からウイルスに対する抗体ができるまで、さらに2、3日かかります。その間はつらいですが、ウイルスを体外に排出してしまえば回復は早く、後遺症もありません。ただ、あまりに症状がひどい場合は、かかりつけ医を受診してください。対症療法として吐き気止めや整腸剤などで吐き気や下痢を抑えることができます。その際、ノロ感染かどうか判断をするために2、3日前の食事の内容を思い出して伝えるようにしてください」

家庭での二次感染対策

家庭で療養しているときに気をつけたいのは家族への二次感染だ。

調理器具は90度以上の熱湯で1分以上煮沸消毒するか、200ppm(0.02%)の次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒する。次亜塩素酸ナトリウムを含有した消毒スプレーも市販されているが、家庭用の漂白剤(5~6%濃度)の場合、500mL入りのペットボトルに水を入れ、ペットボトルのキャップ半分の漂白剤を入れると適度な濃度の消毒液ができる。調理器具やシンク周りの消毒のほか、ドアノブなど家族が頻繁に触る家具・備品の表面も拭いておく。

また、家庭内での二次感染源は吐瀉物の汚染によるものが多い。特に吐瀉物がついた寝間着やシーツなどを予洗いせずに、洗濯機に放り込むとかえって汚染が拡がる。塩素系漂白剤に30~60分漬けた後、他の家族のものとは分別して洗濯する。前述の東京都福祉保健局のガイドブックが役に立つ。ぜひ一読してほしい。

井手ゆきえ(いで・ゆきえ)
医療ジャーナリスト
NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けではネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。
(写真=iStock.com)
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