意味のなさそうな会話が大事

【山田】ああ、でも僕、典型的な“仕事の話しかできへん”人間かもしれません。僕が引きこもりだったせいもあるかもしれませんが、学生時代に同級生だっただけの人と、2時間酒飲みながら話せる自信がないんです。

【田中】というと?

田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)

【山田】だって、そこでの会話って「あのとき、あいつああだったよな」という昔話くらいしか、芯を食った話ってできませんよね? それが、すごく無意味なことに思えてしまって、しんどいんですよ。有益だと思える話題が、仕事しかない。僕、やばいですかね? まさに、田中先生の言う「定年後にやることない男」になりそうで、怖いです。

【田中】それは非常に男性学的な問題ですね。議論やマウンティングではなく、ただ共感を示してキャッキャ盛り上がるような、いわゆる“女子会”的な会話を、男性は「意味がない」と下に見がちです。でも、同性同士でそういう会話ができるのって、連体感を強めるためにも、精神面のメンテナンスという意味でも、とても大事だと思うんです。

【山田】世間一般では、仕事とかの利害が絡んでいない人のほうが“本当の友達”みたいなことになるんですかね?

【田中】個人的なことを言わせてもらうと、仕事上の利害が絡んでいるから相手は僕に親切にしてくれているのに、それに甘えて全幅の信頼をしたら、相手に重たいと思わせてしまうのではないか、と考えてしまいます。

【山田】それは先生が少し考えすぎじゃないですか?(笑)

「おやじ会」LINEグループを断ってしまった

【田中】何度か取材を受けた編集者で、個人的に興味のある方がいるんですけど、僕から「ご飯に行きませんか」と誘って、「いや、そういうんじゃないです」って断られたら、立ち直れないんじゃないかって不安なんです(笑)。

【山田】まあ、かく言う僕も最近、娘の幼稚園で、保護者のお父さんたちが「おやじ会」というLINEグループを作るという話を小耳に挟んで、実際奥さん経由で誘われたんですが、とっさに入るのを断ってしまったんですよね。あのとき入っていれば、僕も日曜日にBBQするような人になれていたのかな、と思って、ちょっと“人間になりそこねた”みたいな、ベム的な気持ちを引きずっているんです(笑)。

【田中】異業種の人と話しをすれば、何かしら発見もあるでしょうしね。

【山田】ええ、マイナスにはならないってことはわかってるんですけど、LINEグループ作ろうぜと言い出したそのノリが、もう根本的に合わないような気がして、二の足を踏んでしまいました。