2人に共通するのが「腹八分目」。肉を摂っても胃が弱っていては消化できない。健康な胃を保つためにも、「腹八分目」を心がけることが大事だとか。
「腹八分目」にはもう1つメリットがある。それは過剰摂取の防止。筋肉が減ると、代謝が落ちエネルギー消費量も減る。当然、摂取量も控えたほうがいいのだが、腹いっぱい食べて肥満になる高齢者が多いのだ。
「肥満になると運動もしなくなり筋肉が衰えます。肥満は糖尿病にもつながるし、血流が悪くなり、認知症になる危険もある。肉がいいからといって食べすぎず、ヒレ肉など低脂肪の肉を少量摂るようにしましょう」
高橋さんも室井さんもほぼ毎日、朝食にヨーグルトを食べている。これはどうなのか。
「ヨーグルトは腸内細菌の働きを助け、腸内フローラを改善します。腸内フローラが整っていないと悪玉菌が有害物質を生み出し、がん、糖尿病、認知症などの病気につながります。ただ、これも食べすぎは厳禁です」
そして最も大事なことが、「ストレスを感じない食事」だ。2人とも朝食はパン。高級店のパンに質のいいバターをぬって食べている。その理由は「好きだから」。
「パン食がいいということではなく、大好きなものをおいしく食べていることが長寿の秘訣でしょう。実は、健康寿命は心の問題が大きいのです。コロンビア大学の研究で“ストレスがないと思っている人”のほうが長生きするというデータがあります。大事なのは自分でそう思っていること。周りから見てストレスがなさそうなのに、本人はストレスがあると思っている人は長生きできません」
ご両人にストレスがあるか聞いたところ、「全くない」と即答。おいしいものを楽しく食べることが一番の良薬なのかも。
参考文献:『わがままだって、いいじゃない。──92歳のピアニスト「今日」を生きる』(室井摩耶子著、小学館)
中島内科クリニック院長
専門は運動療法、心理療法。東京教育大学理学部理学研究科博士課程修了後、横浜市立大学医学部卒業。横須賀共済病院・内科部長、栄養部長を経て、同院を開設。