宗派の違う宗教が毎年一同に会し、一緒に祈る
鎌倉の文化的、社会的な魅力は、「多種多様な価値観を受け入れる土壌」と「新しい文化を生み出す力」と「世界に向けての発信力」だと考えています。
たとえば、鎌倉はナショナルトラスト発祥の地でもあり、一説にはNPOの発祥の地ともいわれ、非常に数多くの市民団体が存在します。また、鎌倉には鎌倉宗教者会議というものがあります。東日本大震災以降、神道、仏教、キリスト教という、宗派の違う宗教が毎年一同に会し、一緒にお祈りを捧げています。
価値観や立場の違う人たちが手を取り合ってお互いの価値観を尊重する。これは世界的に見ても珍しい試みだといわれています。
こうした自然や文化が、僕たちの考える「地域環境資本」です。では、「地域社会資本」とはどういうものでしょうか。鎌倉市では「共創型未来都市」をスローガンに掲げていますが、僕たちは、この「共創」を「つながる」こととして解釈しました。
「つながり」に基づく資本は数値化しにくい
僕たちが考える「つながる」には4つあります。「仕事でつながる」「助け合いでつながる」「ライフスタイルでつながる」「遊休地でつながる」。そのそれぞれが、「つながり」を広げ、深めていくことで「地域社会資本」が充実します。
地方創生の議論の本を見ると、「バケツの穴を塞ぐ」というような表現で、域内の生産と消費を増やすことで、地域外への対貿易赤字を減らすという議論があります。経済資本を充実させるには当然やるべきことです。この部分の経済活動は数値化しやすいので、取り組みやすいものでもあります。
でも、地域社会資本という「つながり」に基づく資本は数値化しにくいので、そこを充実させる方法論までなかなかたどりつかない。人同士がつながると生産性も上がるので、地域社会資本を増やすことは、結果として経済資本を増やすことにもつながります。新しい指標をつくることでその流れをつくることが、鎌倉資本主義の目指すところです。