鎌倉で働きたい人は「平均」からはズレている人たち

鎌倉は都心から離れているぶん、不便です。東京のように何でも揃っているわけではありません。それでもここに住みたい、ここで働きたい、という人は、きっと「平均」からはズレている人たちです。だからこそ面白い。

柳澤 大輔(著)『鎌倉資本主義』(プレジデント社)

誰もが東京を目指すのではなく、地域がそれぞれの個性を強みとして繁栄していく地方創生は面白い。グローバル化がすすむ時代に、企業があえて地域にコミットしていくことが、いま資本主義が抱えている課題に取り組むことにもならないか。鎌倉で活動するうちに、そんな仮説を持つようになりました。

少し飛躍しているように聞こえるかもしれません。順を追って説明します。従来の資本主義が抱えている課題について、多くの人がたくさんのことを語っています。僕も専門書籍も含めて何冊か、それに関する本を読んでみました。そのうえで、いま資本主義が直面している最大の課題を挙げるとするなら、次の2つになると思います。

・地球環境汚染
・富の格差の拡大

なぜこのような問題が生まれるのか。それはGDP(国内総生産)という単一の指標を企業や国が追い求め過ぎていることに起因しているのではないかと思いました。

長距離・長時間の電車通勤のほうがGDPは増加する

GDPは経済活動の状況を示す指標ですが、この一世紀近く、経済的な豊かさを測るための指標としても使われてきました。GDPが右肩上がりで成長し続けることが、よいことだとされてきました。でも、本当にGDPだけが豊かさの指標になるのでしょうか。

たとえば、鎌倉などの地域に住んで、職住近接のワークライフスタイルを実現する。地産地消の食材を楽しむ。コミュニティでつながりが生まれて、金銭の介在しないプロジェクトをみんなで立ち上げて、自分の住むまちをよくしていく。そうした活動は、GDPの増加には貢献しません。

職住近接ではなく、多くの人たちが長距離・長時間の電車通勤をするほうが、輸送にお金が使われるぶんGDPは増加します。地元でとれた食材を食べるより、海外から飛行機で輸入した食材を消費するほうが、GDPは増加します。でもそれって、なんだかおかしくありませんか?

通勤時間は短いほうが疲れないし、地元の食材のほうが輸入品より安くて新鮮です。GDPだけを見ていると、こういうちょっとした矛盾が積み重なって、結果的に大きな問題になってしまいます。