客側にしてみれば、すでに知っていることや、興味のないことを丁寧に説明されても「うるさい」と感じるだけ。では、相手にニーズがあるかどうか、どう知るか。闇雲に質問してもうまくはいかない。聞き方のコツはひとつだけだと渡瀬さん。
「例えば、クルマをセールスする場合でも『最初に乗ったクルマは何ですか?』(過去の質問)、『今乗っているクルマは何ですか?』(現在の質問)、『これから買いたいクルマは何ですか?』(未来の質問)をうまく使い分ける。当然、営業マンの一番欲しいのはより売りやすくなる未来の質問に対する答えです。ところがお客様に未来の質問をいきなりぶつけても、なかなか答えてくれません。未来の質問は答えにくいのです」
なるほど「明日のランチ、何を食べますか?」と聞かれても答えにくいが、「昨日何を食べましたか?」(過去の質問)→ハンバーグ定食。「今日は何を食べましたか?」(現在の質問)→ラーメン餃子セットという流れがあってから「明日のランチ、何を食べますか?」と尋ねられたら、「少しあっさりめでそばにでもしようかな」と答えが見つかるように、過去、現在と聞いてから未来の質問をしたほうが、相手は答えやすいのだ。
過去の質問は、商品選びで相手が重視するポイント(価格なのか、機能性なのか、操作性なのか、デザインなのか)もあぶり出してくれる。
「相手を知ったうえで、ピタリと合わせた説明をできる人が売れるのです。つまり、話すのは苦手でも、相手の話を上手に聞くことができる人こそが営業マンに向いているのです」
目の前の相手にぴたりと合わせた説明。これこそがプレゼンだ。