※本稿は、上野雄史・星野崇宏・安田洋祐・山口真一『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』(日経BP)の一部を再編集したものです。
日本では「顧客関係管理」が誤解され、乱用されている
私がここでビジネスパーソンに提供したい学知のツールは、世界標準の「顧客関係管理」(CRM : Customer Relationship Management)の方法です。
国内ではCRMという言葉が誤解され、乱用されているのは大変残念です。例えば、
①顧客データを使ったデータベースの話だから、オフラインの事業とは関係ない
②「お客様にいかにファンになってもらうか」といった話で、コモディティ化された業種(である自社)とは縁遠い
③BtoBの自社には関係ない
など。しかし、いずれも大きな間違いです。
新規顧客開拓と既存顧客維持のどちらにどの程度、経営資源を投下すべきか、BtoB業種での営業活動の効率化、BtoC業種での広告費と販促費の配分、さらにはメーカーの新製品開発、サービス業の新規サービス開始などは、それぞれ重要な戦略判断です。
このような様々な戦略策定に使える、膨大な学知に基づく「再現性のある利益獲得のためのビジネス戦略立案ツール」、それがCRMです。
顧客情報を蓄積しにくい企業でも即座に利益率アップ
顧客の行動データを細かく蓄積できるオンラインサービスやEC(eコマース)であっても、CRMの本質である「どんな観点で」「どんなデータを」「どう利用するか」が分からず生かせない企業では、システム投資費用の回収どころか運用コストが垂れ流されている残念な状況になります。
顧客データを蓄積しにくいオフラインのサービスやメーカーでも、CRMの本質を理解し活用できれば利益率を即座に高めることができます。後述しますがデータの有無は本質ではなく、値は仮置きしたり業界統計や公的統計を出発点にすればよいのですから。
また、マーケティングというと4P(プロダクト・プライス・プレイス・プロモーション)やSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を想像される方が多いですが、経済学的なフレームワークに基づきこれらを利益という観点で統一的に管理する一段上の経営的な視点、それがCRMである、といえます。