“わが町の鉄道”に今も「乗って残そう」という気運が高い
列車事故による廃業路線という、いわば負のイメージを抱えてのスタートから15年。地道に取り戻した信頼感が乗客数の伸びを下支えしていることは間違いない。
聞けば、開業に至るまでの住民活動では7万人近い署名が集められ、鉄道の存続を訴える駅伝大会まで開かれたという。住民たちの強い思いによって復活した“わが町の鉄道”に対しては、今も「乗って残そう」という機運が高いと佐々木さんは話す。
「高齢になったとき、あるいは子供が高校生になったときに『走ってないと困るから』と意識的に乗ってくださる方はたくさんいます。ありがたいことですよね」
鉄道のない不便さが身にしみている沿線住民にとって、えち鉄が走る姿こそ、平穏な日常の象徴なのだろう。
そんな鉄道を舞台にした映画「えちてつ物語」が11月下旬から全国で順次公開される。主人公はえち鉄のアテンダントという設定で、沿線の名勝地も映し出されるというから躍進に弾みをつけることだろう。
福井市のシンボルマークは、フェニックス(不死鳥)だ。戦災や震災(1948年、震度7の福井地震)などたび重なる災禍にもめげず、立ち上がった福井市民の勇姿がそれに似ていることに由来している。どん底からはいあがる粘り強さを信条とした福井の人たちの気質だからこそ、かつて崖っぷちだったえち鉄も見事よみがえったに違いない。