任期中のことだけを考え、自己保全に終始する経営者たち
現在、日本でも多くの企業が「大企業病」をわずらっている。
トップダウンに慣れ切った社員は考えるチカラをなくし、見ざる・聞かざる・言わざるを決め込み、頭を低くして耐えることに終始する。一人ひとりの仕事は狭く、考える人とそれを実施する人に分離して、工夫や発案など皆無で、ただ手続きに終始して、目の前の作業をこなすだけになっている。
経営者に限れば、自分の任期中のことだけを考え、自己保全に終始する。責任をとる覚悟すら見られない。一時頭を低くして嵐をすぎされば終わりという風潮すらある。
企業は変化する社会へ適応していかなければならない。それは単なる順応ではなく、「革新」を必要とする。未来の予測は難しいが「変化」があるというのは確実である。来るべき変化を予見して「手」を打つ必要がある。
打つ手はひとつには捨てるものを決めること。そして次代にかなうものを生み育てるしかない。モデルなき時代、トップを走る企業の苦悩がそこにある。
「まず自分自身を変えることだ」と常に訴えていた
かつてイオンには、スクラップ&ビルドに対して躊躇しない果敢な行動原理があった。小嶋にも岡田卓也にしても、ダメなものを引きずらないある種非情とも思える勇気がある。岡田卓也に至っては、創るよりも壊すほうが好きと言わんばかりに喜々としてスクラップする。そうして一から種をまき、育成成長させるという比較的長いタームでの起業とも言うべき思想があった。
前社長(二木英徳氏)は岡田卓也を評して「私は岡田さんのまねはできん。私は直近5年ぐらい見通せるが、岡田さんは10年20年先を見ている人や」といったほどだ。
それほど、先を見越した岡田卓也の経営においても対応できる人材を育成するよう「経営人事」「戦略人事」を行ったのが小嶋千鶴子だ。
その哲学を学び、実践していくことができれば、それは企業の持続的成長を可能にするはずだ。
小嶋の教えは、「いつの世も教育は常に人間の未来を拓く可能性を秘めている」というものだ。それは人間の可能性の追求であり、人間しかできない創造の世界であると教育の重要性を説いている。
「まず自分自身を変えることだ」と小嶋千鶴子は常に訴えていた。
東和コンサルティング 代表
三重県生まれ。岡田屋(現イオン株式会社)にて人事教育を中心に総務・営業・店舗開発・新規事業・経営監査などを経て、創業者小嶋千鶴子氏の私設美術館の設立にかかわる。美術館の運営責任者として数々の企画展をプロデュース、後に公益財団法人岡田文化財団の事務局長を務める。その後独立して現在、株式会社東和コンサルティングの代表取締役、公益法人・一般企業のマネジメントと人と組織を中心にコンサル活動をしている。