呪縛の根源になっているのは「憲法第8章」

日本の地方が創生、あるいは再生できないのは、地方に自立する意志も体力も構想もないからだ。連邦国家のアメリカやドイツ、あるいは省ごとに大きな権限が与えられている中国は、州(省)にさまざまな権限があり、州が世界に直接アクセスしている。ところが日本は中央政府が大方の権限を独占しているために、地方は特色ある政策を実行できない。この呪縛の根源になっているのが、「憲法第8章」である。

詳しくは拙著『君は憲法第8章を読んだか』(小学館)に譲るが、「地方自治」という括りでありながら憲法第8章に「地方自治体」(自治の権能を持つ地方団体)という言葉は出てこない。

都道府県や市町村は「地方公共団体」、つまり地方で公共サービスを行うことを国から認められた団体としてしか規定されていないのだ。連邦国家の州のように日本の地方に「立法」「行政」「司法」の三権はなく、国から分権された範囲で条例を定めることしかできない。

もっと終わっているのは野田聖子氏と岸田文雄氏

「安倍首相が憲法改正に舵を切るなら私も受けて立つ。ただし私は9条改正を後回しにしてでも、まずは地方創生を妨げている憲法第8章を改正するべきと考える。地方創生大臣をやらせてもらった経験から言えば、結果を残せなかったのは私自身の力不足もあるが、本質的な問題は8章にある。8章を書き換えて、中央省庁が握っている三権を大幅に地方に委譲していく。それが疲弊した地方を救い、日本経済を再生させる唯一の方法である」

石破氏がこのように訴えていれば、「なぜ地方創生なのか」「なぜ憲法改正なのか」をわかりやすく説明できて安倍首相との“違い”が鮮明になっただろうし、地方議員の目を開くことができたのではないかと思う。それができていれば、消化ゲームのような総裁選でも対抗馬としての爪痕は残せたはずだが、もはや石破氏の出番は回ってこないだろう。挑戦者としての政治家・石破茂はもう終わった。

もっと終わっているのは、ポスト安倍に強い意欲を示しながら出馬しなかった野田聖子総務大臣(当時)であり、岸田文雄政調会長である。