「俺は今、何の大臣かと秘書官に聞き」
「俺は今、どこの党かと秘書に聞き」という川柳がある。政党の離合集散が続いたころ、所属政党がころころ変わってしまう政治家がたくさんいるさまを皮肉ったものだ。ならば今は「俺は今、何の大臣かと秘書官に聞き」という状況なのかもしれない。
第4次安倍改造内閣は、派閥順送りで閣僚待望組の政治家を内閣に押し込んだような顔触れになったが、一方で安倍晋三首相は、思い付きのように「担当」を増やした。そのため、1人の閣僚が、たくさんの担当を兼務する状態になっている。新閣僚たちの間では混乱が広がっている。
「事務方でしっかり検討させたい」では落第
翁長雄志・前沖縄県知事の県民葬が行われた10月9日、宮腰光寛・沖縄北方担当相は、玉城デニー新知事と県庁で会談した。9月30日の知事選で当選した玉城氏が安倍内閣の閣僚と対面したのは、これが初めて。玉城氏は、名護市辺野古への新基地建設反対の考えをあらためて伝え、沖縄振興にむけた21項目の要望書を宮腰氏に渡した。
その時、宮腰氏は「今回、沖縄担当大臣として沖縄振興全般を担当することになった。知事から要望をいただいたが、これほどたくさん項目があるとは思っておりませんでした。持ち帰って、まずは事務方でしっかり検討させたい」と戸惑い混じりの表情で語った。10月2日の閣僚就任から1週間あまり。宮腰氏が準備不足のまま玉城氏との会談に臨んだことをうかがわせるシーンだった。特に「事務方で検討させる」という言葉は、政治主導を標榜する安倍政権の発言としては落第だ。
沖縄では知事の公式会合はすべてマスコミにフルオープンで行われる。玉城氏と宮腰氏の会談シーンをテレビで見た人は「この大臣で沖縄政策は大丈夫か」と心配になったかもしれない。
本人の名誉のために書くが、宮腰氏は琉球泡盛の海外輸出に力をつくすなど、沖縄振興に熱心に取り組んで来た政治家だ。その宮腰氏でさえ、得意の沖縄政策で頼りなさそうにみえることには理由がある。あまりに担当が多いのだ。
宮腰氏の担当セクションを列記してみよう。沖縄・北方担当。「1億総活躍」担当。行政改革担当。国家公務員制度担当。領土担当。消費者および食品安全担当。少子化対策担当。海洋政策担当。計8つの担当大臣を兼ねている。