1人でこなす仕事のキャパシティーを超えている
宮腰氏は2日、電話で安倍氏に入閣ポストを告げられた後、記者団にコメントを求められると、いくつか担当をあげた後、「他にもいっぱい(ポストが)ついていたが、メモしきれなかった」と苦笑している。翌日、宮腰氏は3人の前任閣僚から引き継ぎを受けた際は「勉強不足な分野も多い」と認めた。
宮腰氏だけではない。他にも「兼務閣僚」はごろごろいる。片山さつき氏は、地方創生担当の他、規制改革、男女共同参画、女性活躍、まち・ひと・しごと創生の担当を兼務する。
安倍晋三首相は、今回の内閣ではたった1人の女性閣僚となる片山氏に「2人分、3人分の働きを」と期待感を示したが、仮に3人分働いたとしてもすべての担務をこなしきれるかどうか。明らかに1人でこなす仕事のキャパシティーを超えている。
批判を避けるために担当ポストを廃止しない
閣僚が複数の担務をこなす例は以前からある。しかし2012年、安倍氏が首相に返り咲いてから、その傾向は顕著になってきている。
安倍氏は国会や改造の度に新しいキャッチフレーズをつくる。「働き方改革」「女性活躍」「1億総活躍」「地方創生」などがそれにあたる。その都度、担当閣僚をつくるのだが、それまでの担当のポストを廃止しないのが安倍流だ。
例えば「女性活躍」は「1億総活躍」の中に含まれるから廃止するという考えもあるだろうが、そうすると「女性活躍の看板は外したのか」という批判を受けかねない。それを嫌って、以前のポストは残し、新しいポストをつくる。だから屋上屋を架すことになる。その結果、大臣の担当が増えていき宮腰氏のように「8つ兼務」が生まれるのだ。
今回の内閣では12人が初入閣した。その経緯については10月4日付の記事「『右寄りのお友達』で固めた安倍内閣の真意」に詳しいので、そちらをご覧いただきたい。12人の多くは、長い間入閣を待望してきた議員たちだ。言い換えれば、政治家の資質に問題があったり、過去に問題発言があったりした議員がかなり含まれている。
そのような政治家が多くの担当を器用にこなせるのかどうか。失敗リスクのある政治家に、たくさんの仕事を与えるということは政権のマネジメント上、好ましいことではない。