人気者ゆえの雑巾がけの難しさ

進次郎氏には、官房副長官就任という報道もあったが、これは政界の常識としてありえない。官邸のスタッフである官房副長官や総理補佐官は、自分を殺して任務にあたることが求められる。官邸の顔である総理以外の政治家が個人の考えを述べてはいけないのである。現在の副長官や補佐官も、「忖度」したとかしないとかで話題にはなっても、実際にどんな仕事をしているかは外には伝わってこない。それで正解なのだ。

「(あらゆる問題について)メディアから質問をぶつけられ大きく報じられる」ことがキャリアパスに大きな影響を与えてしまうと、飯島氏。調整役になったり、雑巾がけをすることが困難になる。(写真=時事通信フォト)

進次郎氏のような人気者には向かないポストである。かつて安倍首相が森内閣~小泉内閣で官房副長官を経験してステップアップした例を踏襲してほしい人も多いのだろうが、当時の安倍首相は拉致問題で多少は知られていたものの、選挙の顔として注目されるほどの人気はなかった。

さらに官邸には小泉首相という大スターがいたので、それ以外の政治家が目立つという心配もなかった。安倍首相は、官房副長官時代に、官邸の政策決定の過程をしっかり勉強できたことだろう。

しかし、いまの進次郎氏は官房副長官を務めるには発信力がありすぎる。さらに、正直で正義感も強いから、たとえ首相の意見であっても納得できなければ「私は反対です」と言ってしまうだろう。官房副長官がそんなことを言えば、大問題だ。今回の改造で彼が重要ポストにつかなかったのは、総裁選で石破茂氏に投票したことによる報復ではなく、単に時期尚早であったと見るべきだ。

進次郎氏の人気は、もちろん若さやルックスもあるのだろうが、国民が持つ不満をはっきり代弁してくれるという点が大きいと思う。しかし、それだけでは、菅義偉官房長官に代表されるような、実務的でコツコツと仕事を前に進めていくタイプにはなれない。ただ世論に迎合して、マスコミに喜ばれているだけでは、政治家としての実績は積めないものだ。

進次郎氏が日本の将来を担う政治家であることは間違いない。そして、従来の道にとらわれない一歩を、今回の人事で、自ら踏み出したのだ。私のような古い永田町の常識からすればびっくりするようなことでも、新しいタイプの政策通となって、雑巾がけを忘れずに、国民にとって具体的な成果をあげていけるような政治家になっていってほしいと願っている。

(iStock.com/時事通信フォト=写真)
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