バンダイ社内での実際の商品開発プロセスとしては、まずファッションやアイテムなどのトレンドを八人のスタッフで調べ、それをパズルのように組み合わせてヒットしそうなものを考えていく。例えば、今年のテーマである「こころの種」ならば、「小さいキラキラしたもの、自分たちが子どもの頃、集めていたよね」、あるいは「今、宝石みたいなものを女の子は好むよね」といった議論を重ねて、提案物を決めていくのだ。
そして東映アニメーションとテーマやツール(商品イメージ)のすり合わせを行う。商品コンセプトが固まると、バンダイ社内ではドールは誰、パフュームは誰、といった形で役割分担が行われ、それぞれの分担ごとに商品を詳細につくり込んでいくことになる。
最近の女児向け商品のトレンドについて尋ねてみた。ガールズトイ事業部マーケティングチーム兼トイ戦略室マネージャーの渡辺寿一氏はこう語る。
「現在のトレンドというと、断定はできないのですが、やはり傾向としてはより本物志向ということです」。これは鷲尾氏が作品づくりの際に感情のリアリティを重視すると言っていたことと通底している。理由は、購買意思決定をする人は主に母親で、彼女はシビアに判定するからだという。
とりわけ昨今、お母さん基準というのが大きな影響力を持っているという。お母さんのパッと見の印象、「可愛いか、可愛くないか」で決まるというのだ。もしもお母さんが「これ、可愛くないじゃん」と言ったら、幼児はそれに素直に影響を受け、「お母さんが可愛くないって言ってるから、可愛くないんだ」と思ってしまう。それゆえ、お母さんの視点、好みはきちんと意識して、モノづくりをしなければならない。
同社では最近、生活実感のあるものをつくることが多いという。あまり飛びすぎているグッズはお母さん基準にパスしないからだ。具体的には携帯電話やパソコンなどを模したオモチャがよく売れるそうだ。携帯電話は大人には最も身近な必需品の一つだ。幼児も触りたがる。しかし壊されたり、誤作動させられたら困るので渡せない。そこで、おもちゃの携帯電話を買い与える。「これはあなたたち用の携帯電話なんですよと。しかも、あなたたち用のものは変身ができる特別製なんですよ」という表現を使うのだ。