掘り下げた質問でも論理破綻しない体育会系は有望

しかも、最近の面接官は学生から説明を受けても簡単に満足しないタイプが多い。

大手メーカーの採用担当者は、質問を繰り返しながら話がロジカルかどうか、に意識を集中しているという。

「2つ3つ掘り下げた質問をすると、話がロジカルかどうかわかります。何かひとつのことについて話してもらい、具体的な部分を掘り下げて質問した際、ちょっと論理的な破綻があっても、話す学生の熱意やエネルギーが伝わると、採用してもなんとかやってくれるのではないかと思います。しかし、話の筋道があやしく、論理的にぐちゃぐちゃになってくると、この学生はロジカルに考える力に乏しく、考える習慣や問題意識も低いなと思ってしまいます」

典型的なのは、就活本の面接の想定問答を暗記してくるようなタイプだ。面接官が少し掘り下げて聞くだけで簡単にボロが出てしまう。

また、掘り下げた質問を受けた学生が、過去の経験のプロセスをそれなりに語れたとしても、それでひと安心とはならない。面接官は別の角度からさらに追求してくる。前出IT企業の採用担当者はこう語る。

「例えば失敗体験の理由をしっかりと説明できれば、コミュニケーション力はあるな、と感じます。第一関門は突破です。でも、問題はその後。私は『もし過去に戻ることができたら、どうやって達成しますか』とツッコミます。成果体験を語る学生に対しては『成果の目標が3倍だったとしたら、どうやって達成しますか』と質問します。これらの追加質問の意図は、自分がやったことに対する構造的理解ができているのか。失敗や成功の要因をちゃんと認識しているのかを確認することにあります。それによって、この学生の考える力を測り、会社に入っても再現性があるかないかを判断しています」

「会社に適応できない」体育会系が増えている

じつはこの「過去に戻ったらどうしますか」という質問を使う面接官は多い。

「たとえば高校時代に野球部に所属した学生に『当時の体力があり、もう1回その頃に戻れるとしたら、勝つために何をどう変えますか』という質問をします。過去の経験から深く学んでいるなと思える答だといいのですが、中には『根性や意欲が足りなかった』『やり切ったから戻りたくない』と浅い回答の学生もいます。これだと反省もあまりしていないし、物事を深く考えるタイプではないなと見なさざるをえません」(前出・大手ベンチャー企業の採用担当者)

※写真はイメージです(写真=iStock.com/gyro)

過去に華麗な実績や経験を持つ学生はそれだけ努力しているわけで、会社でも活躍してくれるのではないかと考えてしまう。だが、採用担当はしつこく何度も聞くという。大手ベンチャー企業の採用担当者は「よりしつこく聞く必要性が発生している」と語る。

「企業の置かれたビジネス環境は10年前と比べてはるかに厳しくなっています。仮に、部活やスポーツの世界でとんでもない成果を上げ、成功のプロセスも理解し、歯を食いしばって努力してきた人でも、社会人になった瞬間に適応できません、という残念なケースも増えています。それは学生の責任ではなく、見極めるわれわれの責任だと思います。ですから学生の本質を見極めるべく、試行錯誤しながらやっているのです」