「どうせ自分には手が届かない」は仕事のプラスにならない

そいつのように言い訳ばかりしていると人格を疑われるから、口に出して言う必要はない。内心で「今回は失敗したけど、こういう事情があったから。次は絶対大丈夫だ」と考えるくらいでいいんです。「あのディーラーが売らなかったからだ」と責任転嫁できれば、「よし、来月はもう1週間早くあの社長にコミットさせよう」と対応策も浮かんでくる。

仕事の約束が守れなかったときに、コミットメントや目標値が高すぎると感じることもあるかもしれません。でも「どうせ自分には手が届かない」という自己否定的な考え方は仕事のプラスにはならないと思います。

以前、ある団地で4階くらいから子供が落ちたのを近くにいた主婦がとっさにキャッチしたというネットニュースを目にしたことがあります。驚くべきことに警察の現場検証の結果、子供の落ちる数秒の間に落下地点まで、どう考えても30代の女性が走って追いつける距離ではなかったそうです。でも現実には追いついて子供を抱きかかえている。

つまり火事場のバカ力ではないですけど、我を忘れるほど集中したときに潜在能力が発揮される。仕事も真剣勝負ですから、集中してやる気が高まれば自分が思っている以上に能力はストレッチする。

問題は、能力をストレッチするインセンティブは百人百様だということです。「給料を何%上げてマネジャーにしてあげる」と声をかけて伸びた部下もいれば、伸びなかった部下もいます。「1年頑張ったらオレが本社に口を利いて、販売企画に戻してやる」と言ってぐっと伸びた営業マンもいる。与えるインセンティブとコミットメントのバランスを取るのがマネジメントの仕事。仕事の約束が果たせないとき「上が私のインセンティブをわかってないからだ」という言い訳もありですね。