では、アジア系外国人宿泊客への対応はどうしているのだろうか。英語が得意ではないという3人の仲居さんも交え、英語での接客事情を聞いた。

台北から来たご夫妻。2回目の訪日だという。

「食事の際は英語のメニューをお渡ししますが、アジアの方は日本語のメニューのほうがしっくりくるようです。漢字でなんとなくわかるからではないでしょうか。英語とは関係ないですが、台湾の方は、食後にフルーツを必ずといっていいほど召し上がります。あと、外国の方は、鍋からつけ汁に直接つけずに小皿にとってから召し上がります。文化の違いに最初は戸惑いましたが、半年くらいで慣れてきました」

ベッドルームはどこ? 布団をもっと高くして、浴衣の着方がわからない、などの旅館ならではの質問やリクエストにも単語を並べて、身振り手振りで説明すれば理解してもらえるという。

「季節がら、玄関におひなさまを飾っているのですが、五人囃子を見て、彼らは何をしているのか疑問をもたれる外国人の方が多いです。“ミュージシャン”とお答えしています」

「私は挨拶は日本語で、いらっしゃいませ、おかえりなさいませと言うようにしています。英語で挨拶をするより喜ばれるような気がします。片田舎の旅館に海外から来てくださる方々は、日本語での交流を楽しみにしている人が多いのではないでしょうか」

日本語をまぜたほうが喜ばれるとは、訪日外国人恐るるに足らず。調子に乗った我々取材班は、「味処 古川」に来ていた若い台湾人夫婦に、英語で話しかけてみた。

みなさんのアドバイスに従い、ゆっくり、はっきり話すことを心がけたら意外にも通じる! やはり流暢に話そうとする必要はないのだ。また、日本のアニメは何が好きか、と聞いたら、うまく言えず困っていたのでノートと鉛筆を渡したところ、「新海」「言の葉」「宮崎」「魔女」「風の谷」と日本語を書いたのには驚いた。同じ漢字を使う民族同士、いざというときは筆談が大きな武器になるのだ。

(取材・撮影=山下久猛)
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