つたない英語の接客で、訪日客に人気を博しているスポットがある。現場で使われているのはカタコトの英語だ。なぜそれでも訪日客は不満を漏らさないのか。現場のスタッフたちに「カンタン英会話術」のコツを聞いた。第2回は「『君の名は。』の舞台」だ――。(第2回、全2回)
※本稿は、「プレジデント」(2017年4月17日号)の掲載記事を再編集したものです。
最後は「ありがとう」を日本語で言うのがコツ
大ヒットアニメーション映画『君の名は。』の影響でアジア系外国人が押し寄せている町がある。岐阜県飛騨市古川町だ。町には劇中に登場する場所が点在しており、そのスポットを訪ねて歩く、「聖地巡礼」を目的とした観光客が世界各国から訪れているのだ。
「多いのが台湾、香港、中国、韓国、タイからの観光客で、台湾や香港は20代の若い女性が目立ちます。英語が話せるのは香港人、マレーシア人、タイ人の順ですね。中国人や台湾人はあまり喋れず、カタコトの単語で返してくるという感じです」と語るのは、飛騨市まちなか観光案内所の吉田幸香さん。3年ほどイギリスの美容院で働いた経験から、英語担当職員に抜擢されたという。アジア人に英語で対応する際は、どんな点に気を配っているのだろうか。
「アジアの方にはあまり正しい発音で話さないほうが通じる気がします。カタカナ英語でも大丈夫で、単語をゆっくり、はっきり喋るほうが伝わります。お互いに英語が完璧ではないので、臆することなく知っている単語を並べて気楽に喋るといいと思いますよ」
外国人には正しい文法、発音じゃないと通じないと思って萎縮しがちだが、アジア人に対してはむしろはっきり単語を区切ってゆっくり話すほうが通じやすいとはまさに目からウロコ。これなら英会話の初心者でもいけそう。
「もう1つ気をつけているのは、ちょっと日本語を交えて話すこと。全部英語ではなく、最後は『ありがとう』など、日本語で言うようにしています。彼らもうれしそうに笑顔で『ありがとう』と返してきます。せっかく日本に来たのだから、日本語を話したいと思っているのではないでしょうか」