「通信販売」の顧客満足度が高くなるカラクリ

例えば、小売業の中で満足度が高い業態が「通信販売」です。なぜなら、通販は、基本的に「その通販業者から買いたい」と思う顧客しか利用しないからです。それに対してリアルな店は、「その店だから利用する」という顧客のほかに、「たまたま近くにあるから利用する」という顧客もいます。そうすると、顧客のニーズの裾野が広がり、満足度にもバラツキが生じます。結果として、全体的な満足度は低下します。

調査開始以来、満足度指数の中央値が最も低い業種が「携帯電話」です。大手3社が市場をほぼ独占していたため、品質は多少低下しても料金を安く抑えたいと思っているユーザーも料金の高い大手を利用するしかなく、全体的な満足度が低かったのです。その後、“格安スマホ”と呼ばれるより安価なサービスを提供する事業者が登場したり、大手がサブブランドを立ち上げたりしました。その結果、大手に不満のあった顧客が移ったことによって、業種全体の満足度は向上しつつあります。

航空会社やホテル、テーマパークなどのようにキャパシティが限られているサービスの場合、利用客が増えることによって満足度が伸び悩むことがあります。利用客が増えすぎると、予約が取りにくくなったり、混雑したりするためです。近年、東京ディズニーリゾート(TDR)の指数が下がっているのも、そのためだと考えられます。

中高年層に軸足を置くセブン-イレブンは高評価を得た。(写真=時事通信フォト)

そうなると、企業はキャパシティを拡大しようとしますが、客層を広げることになるため、満足度のバラツキが大きくなり、かえって全体の満足度を下げる可能性があります。マクドナルドが一時期満足度を下げたのは、顧客が増えたことによりニーズが多様化した中で、同じブランドの中でカフェなどを展開したことが原因かもしれません。飲食や小売りなどでは今、ホールディングス体制の下で複数のブランドを展開する方法がトレンドになっています。ニーズが多様化したら、それぞれのニーズに応えるブランドを複数運営し、バックヤードで効率化を図っているのです。

CSを高める方法として、一般に現場のサービス改善活動を重視する傾向がありますが、実際には、このように客層に合わせて異なるブランドを展開するなど、ターゲットを絞り込んだほうが効果的であると考えられます。

もっとも、ニーズの裾野が広いにもかかわらず、満足度が高い企業もあります。セブン-イレブンやヤマト運輸は、いずれもシェアトップですから、客層は非常に広いにもかかわらず、高い満足度を示しています。セブン-イレブンの場合、「少し値段が張ってもいいものを」あるいは「家族の団らん」といった方向性が、しっかりと顧客に届いているのではないかと思います。実際、セブン-イレブンの客層は中高年の比率が高くなっています。その層に軸足を置いてサービスを展開していることが、高評価に結びついているのではないかと思います。