他人の褌で相撲をとると思えば苦しまない

──ビジネスは簡単と言うが、複雑怪奇で、人生の深淵なテーマとも感じているビジネスパーソンは多い。

RIZAPグループの瀬戸健社長(左)は、松本晃氏を同グループCOOに迎え入れると発表(18年5月28日)。(AFLO=写真)

【松本】「それは皆さんの勘違いです。難しく考えるから、かえってうまくいかないことが多いんです。ビジネスというのは、当たり前のことを当たり前にやるだけなんですよ」

「たしかに仕事をしていれば予測しないことが起きます。カルビーでもいろいろなことがありました。東証一部に上場した日(11年3月11日)に東日本大震災が起きて、相場は軒並み大暴落しました。商品の大リコールも何度かありましたし、17年はジャガイモが足りなくて製品がつくれなくなった。でも、それを大変なことだとは思わない。仕事が心配で夜寝られなかったなんて、46年間の仕事人生で1回もないですよ。だって所詮、仕事って他人の褌で相撲をとっているんですから。勝っても負けても会社持ち。だからといって手を抜くわけじゃないですよ。でも目の前のことにいちいちプレッシャーを感じていたら、本気で会社の仕事をできませんよ」

お金の弱点は、あの世に持っていけないこと

──ご自身にとって会社経営、そして仕事の魅力とは?

【松本】「会社の経営というのを何かと言ったら、『すべてのステークホルダーを喜ばせること』なんです。それには儲ければいい。仕事をして利益を上げることは、格好よく言えば、世のため人のためになる。皆が喜んでくれるということは悪くないですよ。自分のところに返ってきますから。お金になって返ってくることもあるけど、仕事の報酬はお金だけじゃない。賞賛をいただいたり、感謝されたりすることもあるからね。だから仕事が一番面白いんです。ゴルフや旅行が面白いといっても、仕事があってたまにやるから面白いのであって、あれを毎日やったってつまらない」

──プロ経営者と呼ばれますが、ご自身の報酬にもこだわるのか。

【松本】「仕事をするときに、待遇の交渉をしたことはありません。そういうのは好きじゃない。カルビーに来たときも、大してお金をもらってません(笑)。後にそこそこもらえるようになりましたけど。しかしそこは大きな問題じゃない。もちろんお金は嫌いじゃないけれど、お金には弱点が1つあるんです。それはあの世に持っていけないこと」