──これからまたどこか新たな会社で経営に携わるのか。

【松本】「幸いまだ元気ですから、面白そうな会社があればやってみたいとは思っています。結局、私にはそれしかできないんです。家内からは、そろそろフルタイムで働くのはやめたら、と言われるんですけど、いきなり暇になったらボケますよ。社外取締役というのもあまり面白くない。あれは言いっぱなしの評論家だから。私は現場が好きで、人が好きなんです。責任を負って、切った張ったをしないと、仕事をしている気にならない。」

「ただ年齢的にもここからはサドンデスです。どこかでコロッと逝ったら、しゃあないね。人生100年というけれど、そんなのウソに決まってます。それでも、これから何をしようかと考えるのは楽しいもんですよ。私はいつも『明日はきっと今日より面白い』と思って生きているんです」

インタビューの直後に「転進」を発表

カルビーは、18年6月20日の株主総会後の取締役会で松本会長が退任し、伊藤秀二社長兼COOが経営を担う。カリスマ経営者が去った後、伊藤氏は経営をどう舵取りしていくのか、その手腕が注目される。松本氏は取材中、次の会社経営への強い意欲を見せ、これで引退する気配は微塵も感じさせなかった。そしてインタビュー後の18年5月28日、RIZAPグループが松本氏を代表取締役COOに迎えると発表した。松本氏はこの新しいマウンドに登って、また新たな伝説をつくり出すに違いない。

▼松本晃CEO時代のカルビー9年史
(左)時事通信フォト、(右)AFLO=写真

2009:会長兼CEOに就任米ペプシコから20%の出資を受け、ジャパンフリトレーを買収
2010:赤羽から東京・八重洲に本社オフィスを移転ダイバーシティ委員会発足
2011:東京証券取引所一部に株式上場「カルビープラス」を原宿、新千歳空港にオープンするなど、小売り事業に進出
2012:中国、台湾、米国に会社設立
2014:海老名サービスエリア(下り)に「Calbee kitchen」をオープン
2015:売上高2000億円を突破(2221億円、2015年3月期)/中国向け販売拠点としてカルビーEコマース(香港)設立オフィスにテレワーク、在宅勤務制を導入
2016:「フルグラ」売上高200億円突破
2017:台風被害による馬鈴薯の不作で生産ストップ(ポテチショック)北海道工場内に海外向け「フルグラ」生産ラインが稼働
2018:就任後初の減収減益(2018年3月期)/京都工場内に「フルグラ」新生産棟が夏に稼働予定なでしこ銘柄に5年連続で選定
松本 晃(まつもと・あきら)
カルビー会長兼CEO
1947年、京都府生まれ。72年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、伊藤忠商事入社。86年、子会社センチュリーメディカルに出向し取締役営業本部長。93年、ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(現ジョンソン・エンド・ジョンソン)入社。代表取締役社長、最高顧問を歴任。2009年6月、カルビー会長兼CEOに就任。18年6月20日の取締役会後に退任予定。18年6月24日にRIZAPグループのCOOに就任予定。
(構成・文=大島七々三 撮影=榊 智朗 写真=AFLO、時事通信フォト)
【関連記事】
京都老舗"230年間作り続ける鯖寿司の味"
カルビー会長"報告は全部お金で表現して"
フルグラ"5年で10倍"朝食革命の仕掛け人
コンビニの「サラダチキン」を食べるバカ
採用面接で「好きな色は?」と尋ねる狙い