中国の最大の問題は「自由がないこと」。ですが、ただ、こと経済においては自由競争の社会です。成長させたい分野にはカネを惜しまない。深センではそうして最先端のスタートアップ起業家たちによる、激烈な競争がおこり、そのダイナミズムが中国経済をけん引しています。いわば「IT社会主義」は、中国のみならず世界の趨勢を左右すると言えます。
中国のエリート、日本の老人ホームに衝撃を受ける
――2017年から始まる本書の年表は、中国共産党建国100年となる、2049年で終わります。30年後の中国は、60歳以上の人口が5億人に迫る老人超大国になるという事実は衝撃的ですね。たとえめでたく覇権国家になれたとしても、国民がヨボヨボでは……。
いま、中国が日本の産業で注目しているのが、老人介護の分野です。今年の4月に来日した中国の高級官僚と話したときには、興奮気味にこう話していました。
「日本の老人ホームはすごい。最新式の自動車椅子で館内を移動でき、ベッドや浴槽に入ろうとすれば、ロボットアームで体を持ち上げてくれる。食堂ではかまなくても食べられるカツカレーが出てきた!」
実は、中国人のエリートに「日本すごい!」と言われたのは久々で、こっちが驚いてしまいました。この来日で、彼らがアポイントを取っていたのは老人ホームに介護士の養成施設、年金や介護保険の専門家。少子高齢化が進む中国からしてみれば、先にその課題にぶち当たっている、日本の老人向け産業は、まさに宝の山に見えるんです。
「カネがすべて」の国民性
もっといえば、中国は伝統的に弱肉強食の社会で、勝ち組ばかりがもてはやされて、弱者に向けたビジネスが発展しづらい。これは中国のダイナミズムにもなっているのですが、道徳や宗教よりも、「カネがすべて」の国民性ですから、弱い立場の人は切り捨てられてきました。だから、老人介護や、保育のビジネスが進んでいない。
しかし、30年後に60歳以上の人口が5億人を超えるとなれば、国家としては国民を支えることは大問題だし、そこを相手にしたビジネスをせざるを得ない。ただ、繰り返しますが、弱者向けのビジネスというマインドは中国人にはない。
中国は、同じ轍を踏まないようにと、日本の「失敗」をよく学んでいます。その1つはバブル崩壊、そしてもう1つが少子高齢化です。バブルについてはよく勉強していますが、少子高齢化についてはまだ「勉強不足」。考え方を転換しないといけないので、まだまだという印象ですね。