――日本では聞き慣れない言葉ですね。

日本でも見覚えがある光景だと思いますよ。空巣青年とは、北京や上海などの都会で一人暮らしをし、休日にも誰ともかかわらないで自宅でスマホをポチポチといじっている男たちのこと。一人っ子で生活にも余裕があり、ネットやメディアを使いこなしていて流行や趣味には敏感だけど他人と積極的に関わることはしない。そんな彼らにスマホゲームはぴったりの娯楽です。

今後、中国のソシャゲの市場はどんどん拡大すると見込まれているんです。このような青年たちの消費を指す「孤独経済」は大注目のビジネスになっています。

中国は「ブルーカラー不足」

――本書では、中国の「労働力不足」が深刻化していくと書かれています。だからこそ、国を挙げて「中国製造2025」を打ち出し、AIやロボットを活用して、労働力の減少を補おうとしている、と。中国ほどの人口があっても労働力不足とは、意外ですね。

近藤大介『未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること』(講談社)

2015年に李克強首相が、10年後の2025年に達成すべきとして打ち出したスローガンが「中国製造2025」です。工業化、情報化を推し進め、AIやIoTといった技術を世界に先駆けて活用していき、イノベーション大国を目指す。李首相は400億元(約6800億円)の投資基金を立ち上げたのを皮切りに、次々と政策を打ち出しました。

日本人であれば痛感していることですが、少子高齢化は、生産年齢人口が減ることを意味します。さらに言えば、中国の一人っ子政策で育ち、経済的にも恵まれてきた世代は、ブルーカラーの仕事を好みません。製造業における「用工荒(ヨンゴンホァン)」つまり人手不足はすでに大問題になっています。

中国では「白領(バイリン)」、直訳すると白ネクタイですが、都会の大学を出たホワイトカラーよりも、田舎から出てきた「農民工」と呼ばれるブルーカラーのほうが就職市場では人気で、初任給も高いという傾向が現れています。ブルーカラーのほうが、ホワイトカラーよりも貴重な人材になっているわけです。

中国でAIが注目される理由

では、どうやって不足するブルーカラーの労働力をカバーするかと言えば、東南アジアなどの途上国に工場を作るのはもちろん、コストを考えれば移民を受け入れることも求められます。ただ、中国は人口そのものはとても多いわけで、移民受け入れには抵抗が強いという側面がある。

そこで、AIが注目されているわけです。工場をオートメーション化すれば、必然的にブルーカラーの必要性は減る。歴史上、産業革命は労働者の仕事を減らしてきました。中国としては、AIやIoTによるいわば「第四次産業革命」をお越し、その分野で世界をリードしたい。つまりは、アメリカを抜いて世界一の超大国を目指すということです。