周りを見渡しても、「子供は一人が当たり前」という環境で育ったわけです。さらに、手厚く育てられたゆえに、個人の生活の充実を重視している人が多く、「夫婦2人の時間を楽しみたい」というDINKSも増加しています。

私は今年の正月に北京で、2人目の子供が生まれたばかりの友人家族にお祝いの食事をごちそうしたのですが、お店の若いウエートレスがにこにこした顔で赤ちゃんをあやしながら、こういったのです。

「私があやしていますから、どうぞ食事を楽しんでください。なにせ私は今日生まれて初めて『2人目の子供』なるものを目にしたので、うれしくて仕方がないんです」

そういえば、私にとっても、2人目の子供を産んだ中国人の知りあいはその友人が初めてでした。「政府は『三人っ子政策』を進めたがっているが、若者は誰も3人目なんて作らないよ」と彼は言っていました。

結婚適齢期の男性が3000万人余る

――人口のお話でいうと、本書にある「2020年の中国では、3000万人の男余りが起こる」という指摘は興味深いです。

中国の新生児の男女比は、女性を100とすると男性が118と、不自然に男性が多い。これは2010年の数字ですが、過去に男性が120を超えた年が3回もあります。WHO(世界保健機関)は女性100人に対して男性102~107人を正常としていることを考えればまさに「異常」。実際に、WHOは中国に是正勧告をしています。

この男女の生まれてくる数の違いによって、適齢期の男性が、女性よりも3000万人も多くなってしまうという事態が生まれるわけです。中国語では剰(あま)った男、「剰男(シェンナン)」と呼ばれ社会問題になっています。近年では、女性の社会進出も進み、男性は経済格差が激しいですから、女性のほうが眼鏡にかなう男性を選べる状態になっている。「持ち家もマイカーもないなんて考えられない」という、選り好みができるわけですね。そうすると、金のない、モテない男は「結婚難民」になってしまう。

そこで考えられるのが、中国人男性と他国籍の女性との結婚の増加。もう1つが、同性愛カップルの増加です。もちろん男が余れば同性愛が増えるというわけではありませんが、男性同士でカップルを公言する人は、中国でも増えています。

そして、2017年頃から中国で流行語になっているのが「空巣青年(コンチャオチンニエン)」です。