それでもブロックチェーンの時代はやってくる

ただ、仮想通貨の肝となる「ブロックチェーン」という新しい仕組みは、世界を大きく変える影響力を持つと真壁さんは言う。

「例えば大手都市銀行には何百万件も口座があって、その入金出金の全部を自前のコンピュータで管理しています。20階ぐらいのビルを建て、そこに大型コンピュータを入れて管理しているのですが、コンピュータは熱を出すので1年中クーラーをつけっ放しです。しかも、日本は地震があるのでバックアップのために全く同じ設備を別の場所につくって管理しています。そのランニングコストたるや膨大です。さらに、合併で別な銀行とシステムを統合するなんてことになると、これはもう大変な作業です。

ところが、ブロックチェーンは従来のような巨大なサーバーによる一元管理ではなく、世界中に散らばった複数のコンピュータにデータを保存し、個々のユーザー同士を結んで直接やりとりをする仕組みですから、銀行はそれぞれ自分のシステムをつくる必要がありません。そして、それは突き詰めていくと銀行がいらなくなるということです」

17年秋、三菱UFJフィナンシャルグループは約1万人、みずほフィナンシャルグループは約2万人、三井住友フィナンシャルグループは4000人と、三大メガバンクはそれぞれ人員削減を発表したことで激震が走った。

低金利政策が続くなか、融資業務で利益を上げるのが難しくなっているのに加え、金融テクノロジーの発達で異業種からの参入もあり、競争は激化。銀行のコスト削減は急務となる。ブロックチェーンはコスト削減にも大きく関与するので、金融機関の取り組みはすでに進んでいる。

「三菱UFJフィナンシャルグループは17年10月にブロックチェーンの技術を使ったデジタル通貨『MUFGコイン』を初公開しました(1円=1コインに変換する仕組みなので、厳密には通貨というよりも電子マネーの一種)」

日本は世界でも突出して現金利用比率が高いことで有名だ。現金の管理や輸送に銀行は多大なコストをかけている。キャッシュレス化が進めば、現場の作業は大幅に減少し、運営コストを下げることができる。

「最終的には日銀もデジタル通貨に移行します。硬貨もお札もなくなるでしょう。貨幣を発行しなくてよくなると、国は莫大なコストを削減できます。しかも、現在、日銀は日銀ネットといって日銀の大型コンピュータと日本中の銀行のコンピュータとを結び、管理していますが、それもブロックチェーンで決済すれば不要になります」

そのとき、現在ある仮想通貨はどうなっているのだろう。

「なくなっているでしょうね」

90年代末のITバブルでは、インターネットという革命が起こるという期待から、多くのIT関連企業が生まれ、株価は高騰した。バブルで儲けようがバブル崩壊で損をしようが、インターネットの時代はやってきた。テクノロジーの発達と相場とは別物。仮想通貨で儲けようが損しようが、ブロックチェーンの時代はやってくる。