「17年のドルと円の為替が、年間を通すと107円から114円。正味7円しか動いていません。こんなに動かないことは1973年に変動相場制になってから数えるほどしかありません。相場が動かないのではどうしようもないと、FXで為替に投機をしていた人が目を付けたのが値動きの激しい仮想通貨。ミセスワタナベ(日本の個人投資家)が一気に流れました」

仮想通貨の理想と乖離した目的は投機

しかし、そもそも仮想通貨は「通貨」としての役割を果たしていると言えるか? と真壁さんは指摘する。

通貨には(1)「支払いの手段」としての機能、(2)「価値の尺度」としての機能、そして(3)「価値を保存」する機能という3つの機能がある。

支払い手段機能としては、17年4月からビックカメラでビットコイン決済ができるようになったものの、支払いのできるところはまだまだ限られていて一般的ではない。価値の尺度としての機能だが、仮想通貨といえども各国のルールは適用される。税金、取引の規制、自国通貨の持ち出し制限などのローカルルールの影響で価格は大きく変動するので物差しにはなりにくい。価値の保存機能もNEMが大量に不正流出したように、理論上は安全でも人為的なミスは起きる。また、市場の拡大の速度に高度な技術を使いこなせる優秀なエンジニアの数が追いつかないなどの問題もあり、セキュリティー面で脆いことは否めない。

「受け取る人もいるし受け取らない人もいるから交換手段にならない。尺度となるには価値が安定していることが重要ですが、ビットコインも200万円まで上がったと思ったら60万円まで下がるというのでは尺度にならないし、寝ている間に価値が変わるわけだから保存にもならない。つまり、通貨としての役割を果たしていません。

日本の場合、通貨と呼ぶことが適切とは言えず、日銀の黒田総裁は『仮想通貨は通貨ではなく、資産の一部、仮想資産である』という意見ですが、私も賛成です」

要するに日本では、仮想通貨は本来の趣旨であるグローバルな通貨としてではなく、通貨という名の投機商品としてもてはやされているのだ。