大企業でゼロイチを実現する条件

【田原】Shiftallでは具体的に何をするんですか。

【岩佐】2つあります。1つは、Cerevoのときと同じく、世の中にまったくない商品をゼロイチで出していきます。パナソニックの資本は入りましたが、そこは独自にShiftallブランドでやっていきます。もう1つ、パナソニックの中で生まれつつある新しいものを一緒に商品化することもやっていきます。

【田原】Cerevoでやっていたのは、ニッチな商品ですよね。独自でやるといっても、マス向けのパナソニックと合うんですか? そこが合わなくて岩佐さんは独立したんでしょう?

【岩佐】少し誤解があるかもしれません。じつはパナソニックはニッチなものもたくさんつくっています。たとえば1個10万円もする音響スタジオ専用の照明もつくっているし、松下の創業製品である二股ソケットもまだ販売しています。なので、ニッチだから企画が通らないということはありません。私が昔、難しいと思ったのはゼロイチの企画です。

【田原】いまのパナソニックはゼロイチができるんですか。

【岩佐】10年前とは確実に変わっています。変わりたくないという人もいるかもしれませんが、危機感を持っている人のほうがずっと多い。とくにトップの危機感が強いことにポテンシャルを感じます。日本のものづくりはボトムアップの傾向がありますが、パナソニックはトップダウンが効き始めている印象です。

【田原】岩佐さんの会社は具体的にどんな商品を出すんですか。

【岩佐】具体的なことはまだ言えないんですが、少しだけ踏み込んで言います(笑)。たぶんモノの外見だけを見ると、従来の商品と変わらないものが出てくる。でも、中に入っているソフトウエアや仕組みはまったく違う。たとえば自動運転だって、見た目は普通の自動車ですよね。でも走り出したらまったく違う体験ができる。それと同じことが、たとえば電子レンジや冷蔵庫、電球といった家電で起きるイメージです。

【田原】頑張ってください。

岩佐さんから田原さんへの質問

Q. 人生100年時代、仕事観はどう変わりますか?

非常におもしろい時代になりますよ。まずiPS細胞など医療の技術が進んで寿命が延びる。一方、AIで一部の仕事は代替されて、BI(ベーシックインカム)で働かなくても生きていけるだけの収入は得られる。その結果、労働は必須じゃなくなり、人生の中で自由な時間が劇的に増えることになるでしょう。

そうなると、仕事の定義も変わる。これまでの仕事はAIやロボットがやるから、もう組織からは与えられません。将来、仕事は自分でつくるものになってくる。たとえば何かボランティアをしたり、地域コミュニティーの手伝いをしてもいい。これからは、広い意味で社会参加することを仕事と呼ぶようになるかもしれません。

田原総一朗の遺言:社会参加が「仕事」になる!

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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