「言われたとおり」ではなく、思いを感じ取る
──高校3年生のとき、アントニ・ガウディ設計の「サグラダ・ファミリア」をスペインで直に目にしたことが、左官職人になったきっかけだそうですね。
【久住】夏休み、父親から「世界を観てこい」と言われ、1カ月半くらいヨーロッパ各国の教会や宮殿を回りました。実はそれまで、親への反発もあって左官になろうとは考えていなかったんです。3歳から鏝(こて)を握らされ、小学生になると夕飯前に一畳分くらいの壁を土で塗るように言われて、終わらないとご飯を食べさせてもらえない。正直、嫌でたまりませんでした。
でも、はじめてサグラダ・ファミリアを目の前にしたとき、なんとも不思議な気持ちになったんです。言葉にするのは難しいのですが、それが発しているエネルギーに震えるというか――。その美しさや技術の素晴らしさに感心するのとはちょっと違って、「こんなものを人間の手でつくることができるんだ」と圧倒された感じでした。
それがすべてとはいいませんが、建物をつくる仕事をしたいと思ったきっかけであることは間違いありません。まあ父親も、僕が別の道に進もうと考えていることは知っていましたから、まんまと作戦にはめられたわけです(笑)。
──高校卒業後、さまざまな親方のもとで本格的な修行をされ、1995年、23歳で独立されます。現在、すでにキャリアは20年以上。多くの仕事をされ、たくさんの職人さんもご覧になってきて、優れた左官職人には何が必要だと思いますか。
【久住】もちろん一定の技術を持っていることは大前提ですが、そのうえで大事だと思うのは、“気が利く”かどうかです。ご存じのとおり、どんな建物も一人でつくり上げることはできません。建築の作業だけに限っても、たくさんの職人がかかわっているし、左官の仕事にしても多くの場合何人かで協力して進めていきます。そうした中では、「こうしたほうが、全体の作業がしやすくなる」「次の工程のために、こうしておこう」という気配りがとても大切になる。職人というと頑固でこだわりが強いというイメージがあるかもしれませんが、本当に優れた人はそれだけじゃないですね。
──いい仕事をするにあたって、施主や依頼主に対しては、どんな姿勢が求められますか。
【久住】基本的には同じ。いかに相手の「思い」を汲み取れるかどうかがポイントだと思います。ただ、お客様に「どんな壁にしたいですか」とだけ聞いてもなかなか本当の想いをとらえるのは難しい。僕の場合は、特に壁とは関係なく、好きな服装とか、ご飯とか、旅行先とか、いろいろなお話を普通にさせてもらって、だんだんとイメージをつくっていくことも多いですね。
特に個人邸の場合、施主様、そのご家族がそこに何十年も生活されるので、単純に「今」のことだけを考えてもうまくいきません。好みや感性というものは、時とともに変化する部分もありますから、その辺りのことも踏まえて導いていくのが職人の役割だと思っています。やはり、こちらは365日壁のことを考えているプロですからね。「言われたとおり」にするのではなく、お客様自身が気づいてない想いを感じ取って、こちらも思いを込めてそれに応える。そんな仕事が理想です。
グリップの天然木材がしっくり手になじむ
──今日は久住さんに、パナソニックのメンズシェーバー「5枚刃ラムダッシュ リミテッド・エディション」を試していただきました。普段、ヒゲ剃りはどのようにされていますか。
【久住】実は、あまりヒゲは剃らないんです。忙しいからとか、こだわりで、というより、肌が弱くて、剃るとヒリヒリしてすぐ赤くなってしまうので。あらたまった席に出向く際など、どうしてもというときはカミソリを使っています。もうずいぶん前、メンズシェーバーを使ったこともありましたが、その製品は肌が引っ張られる感じがして、自分には合わなかった……。
──今回試していただいたのは、新発売された「5枚刃ラムダッシュ リミテッド・エディション」。グリップ部分に天然木材を使った限定モデルになります。剃り心地はいかがでしたか。
【久住】メンズシェーバーを使うのは、およそ10年ぶり。正直、痛くないか、ちょっと心配でした。でも、このラムダッシュはお世辞抜きによかったですね。剃り心地については、“気持ちよかった”というのが率直な感想です。肌へのあたりがとてもやさしくて、滑らか。最新のメンズシェーバーはここまできているんだと感じました。
具体的に感心したのは、やっぱりヘッド部分が柔軟に動いて肌に密着するところ。アゴの下なども、抵抗なく、すいすいと剃ることができました。お話ししたとおり、昔、肌が引っ張られる感じがあってそれが苦手だったので、メンズシェーバーへの印象が変わりました。
──ヒゲは剃り残しなく、きれいに剃れたでしょうか。
【久住】久しぶりにきちんとヒゲを剃りましたが、短い時間ですっきりときれいになりました。手で触ってみても、ツルツルです。ラムダッシュの刃には、焼き入れした鍛造刃が使われていると聞いて、なるほどと思いました。実は私たちが使う鏝にも鍛造した鋼が使われています。やはり強度や耐久性に優れていますから。
──「5枚刃ラムダッシュ リミテッド・エディション」の製品としての仕上がりについてはいかがでしょうか。
【久住】グリップの天然の木はやっぱりいいですね。手にしっくりなじむ。全体のデザインもよくて、丹念につくられていることが伝わってきます。
僕は鏝を1000丁くらい持っていますが、やっぱりいい道具というのは手にした瞬間にわかります。自分のものかどうかは、目をつぶっていてもわかりますね。鉄の板に持ち手がついているだけのように見える鏝ですが、微妙にへこみや曲がりが付いていたり、とても精工につくられています。そして出来のいい道具というのは見た目も美しい。つくった人の思いが伝わってくるから、こちらもしっかり手入れをして丁寧に使おうという気持ちになるんです。
──どんな仕事にも、本物とそうでないものがあると思います。その境界線はどこにあるか──。最後、久住さんの考えを聞かせてください。
【久住】左官の仕事でいうと、例えば「地層」をモチーフにして壁をつくっていくことがあります。そのとき、地層の模様をそのまま壁に再現しても本物にはならないと僕は思っています。自然が長い時間をかけて生み出した美しさをいったん自分の中に取り込み、消化をして、表現していく。そうした作業が必要で、表面だけを写し取ってもダメなんです。先ほども、相手のことを考えて「思いを込める」という話をしましたが、結局そういうことです。これは建築でも、工業製品でも、どんなものづくりにも共通する話だろうと思います。
加えていえば、本物の仕事をするには本物に触れることもとても大事。僕にとっては、やはり地元・淡路島の海であり、山であり、空が基本にあります。かつて淡路島を拠点にすべての仕事をしていたときは、それらと当たり前に触れ合っていたのであまり意識もしなかったのですが、東京に事務所を構えるようになり、インプットの大切さも実感するようになりました。これからも美しいもの、神秘的なものを素直に受け止める心を大切にしながら、一つでも多く本物の仕事を重ねていければと思います。
天然木をまとい、最新のテクノロジーを備えた「5枚刃ラムダッシュ リミテッド・エディション」
●製品の主な特徴
【5Dアクティブサスペンション】
前後・左右・上下に加え、“ツイスト”と“スライド”の可動域を手に入れた新たな密着ヘッド。アゴ下や頬の凹凸面に、さらにやさしく密着し、あますところのない深剃り性能の発揮に貢献する。
【パワークイックスリット刃】
5枚刃の中央に位置するパワークイックスリット刃。除去率を従来比 200%(パナソニック2016年発売ES-LV9Bとの比較[同社調べ、同社独自基準に基づく])。アゴ下やノドの長いヒゲや寝たヒゲも素早くカット。休日に伸びた無精ヒゲもストレスなく整えることができる。
【スマートロック機能】
グリップ部分を握ったことを感知してロック解除。手を離すと約60秒後にスイッチが自動でロックされるため、誤操作を防ぐことができる。