安室透を演じている声優は古谷徹さん。ピンと来た人もいるでしょうが、アニメ「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイから名前が採られています。ちなみに安室のライバルの名前は「赤井秀一」(声優は池田秀一さん)で、アムロ・レイの宿敵であるシャア・アズナブルの通称「赤い彗星(すいせい)」からもじったもの。名付けこそ、原作者の青山先生が大のガンダムファンであるところから生まれた“お遊び”ですが、活躍ぶりは単なるサブキャラクターにとどまりません。

コナン映画は例年、コナン以外のもう1人のメインキャラクターにフィーチャーし、ストーリーやキャラクターを深掘りしてきました。前述のとおり安室も20作目の「純黒の悪夢」で、赤井とともに登場。「ガンダムの再来だ」と言わんばかりのやりとりで、一気にファンを増やしました。そこから2年、満を持して本作で主役級の登場。「安室人気」を爆発させたというわけです。

「安室の女」と呼ばれる熱烈なファンも

ここまでコナン映画の戦略を追いかけてはみたものの、コナンファンの筆者でも正直言えば『ゼロの執行人』がここまで爆発的なヒットになるとは思いもよりませんでした。やはり本作のヒットは「ひとえに安室のおかげ」と感じます。

安室という男は、これまで赤井とのライバル関係で掘り下げられることが多かったキャラクターです。しかし今回の映画には、赤井の姿はありません。ですが結果として多くのファンが彼の魅力を再発見することになりました。本作をきっかけに安室のファンになった女性を「安室の女」と称するファンカルチャーも生まれました。

映画に先行して展開した「安室透とLINEでトークできる」という書店フェアでは、対象書籍を購入して、アカウントを登録した人が10万人を突破。多くのファンが安室との会話を楽しんでいます。このフェアは一度終了しましたが、興収80億円を記念して、再開されています。

安室を演じる古谷徹さんのTwitterは、映画公開後、フォロワー数が2万人増。 高知の老舗ハンコ店では、安室の本名である「降谷」を刻んだハンコに注文が殺到し、大きな話題になりました。二次創作カルチャーでも、安室のイラストや小説が活発化。投稿サイト「pixiv」の小説カテゴリのデイリーランキングでは、5月以降、上位作品の9割がコナン、それも安室にまつわる二次創作が占める状況が続いています。