そんな大人ファンでも視聴に耐える物語を作ろうと、コナン映画の脚本家にもバリエーションが生まれています。『ゼロの執行人』の脚本は、ドラマ『相棒』の脚本で知られる櫻井武晴さん。また前作『から紅の恋歌(ラブレター)』では、ドラマ化もされた『福家警部補の挨拶』などを手掛けた本格ミステリ作家の大倉崇裕さんを起用しています。
もともと『ダイハード』など往年の名作映画のパロディーを詰め込むなど、大人に向けた “くすぐり”があったコナン映画ですが、近年は大人向けのドラマを得意とする製作陣をそろえることで、ますます「子どもだけではなく、大人からも評価される作品」を目指しています。
興行収入は6作連続で伸長
思えばファミリー向けの“定番アニメ”の映画は、大人のファンもターゲットにした作品が成功を収めています。例えば「ドラえもん」でシリーズ最高興収となったのは、「すべての、子ども経験者のみなさんへ。」というコンセプトをうたった「STAND BY ME ドラえもん」(83.8億円)。2017年公開の「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」(35.5億円)は作中に“かつてのポケモン世代”への目配せがあり、2011年以来前年の興行収入を割り続けていたポケモン映画で久しぶりとなる前年越えを成し遂げました。
さてコナン映画では、「大人需要」の取り込みに効果はあったのか。答えは「イエス」です。コナン映画の興行収入は、2012年公開「11人目のストライカー」から毎年興収記録が上がり続けています。
コナン映画の歴史の中でも、「明らかに違う層にリーチした」と感じさせたのは、2016年の第20作「純黒の悪夢(ナイトメア)」です。冒頭でもふれた「黒ずくめの組織」を大々的に取り上げた作品ですが、とりわけ話題となったのは、「安室透」と「赤井秀一」という男性人気キャラの直接対決があったことです。
一気に大人の女性ファンが増え、多くのリピーターが何度も劇場に足を運びました。女性向け作品でおなじみになりつつある「応援上映」も、コナン映画として初めて行われました。配給元によると、観客の6割が女性だったといいます。新規層の獲得は数字にも反映され、興収はシリーズで初めて60億円を突破しました。