炊飯器から取り出し、室温と同じになるまで5時間、放置すると、643グラムにまで減った。つまり、炊きたてのときより2.6%も水分が飛んでいる計算になる。やはり炊きたてよりは水分が飛んでいないと、炒めても飯粒が柔らかく、ベタついてしまうのだ。
それなら、保温したご飯を使ったらどうだろうか? 保温しても水分は飛ぶ。しかも温かいので冷ご飯を使ったときのように鍋の温度は下がらず、ほぐれやすいはずだ。
保温ご飯のほうがパラパラになりやすい?
早速試してみよう。炊いたご飯を炊飯器に入れたまま5時間保温した。これはおいしく保温する限界といわれている時間だ。5時間以上おいたものは、ご飯の劣化が気になる。臭みが出て、食感もポロポロして、色も変色し、味も悪くなってくる。チャーハンにすればそのまま食べるよりは気にならないが、おいしいチャーハンを作るうえでは避けたいところだ。
さて、肝心の「水分の飛び」である。5時間保温したご飯の重さをはかると655グラム。炊きあがりから1%しか減っていない。こんなに少し水分が減ったところで、炊きたてと違いが出てくるものだろうか?
疑念をもちつつチャーハンを作ってみた。ほぐれやすさは炊きたてと同じ感じだが、仕上がりはこちらのほうがパラリとしている。たった1%であっても、水分が減っていることに意味があるのだろう。
また、冷やご飯のチャーハンと比べても、こちらのほうがおいしく感じる。冷やご飯のほうが水分は減っているぶん、弾力があって、それがパラリとした印象につながる。しかし、保温ご飯は、より水分を含みつつも飯粒同士がバラけ、また高い温度で炒められて香ばしさもあり、全体的にはよりパラリとした印象なのだ。
ほぐれやすさと鍋の温度の関係に注目
冷やご飯はほぐれにくいせいか、保温ご飯に比べると、ところどころで飯粒同士がくっついていることも、パラパラ感を減退させている。なお、卵、そして保温したご飯を投入したとき、鍋の温度は170度に下がった。炊きたてよりも低いが、冷やご飯よりはだいぶ高い。
つまり、ご飯が含む水分が多めであっても、ほぐれやすく、投入後の鍋の温度も高いので、しっかり炒めることができた。だから冷やご飯よりパラリと感じたのだろう。
ただ、炊きたてと比べると、投入時の温度は10度ほど低くなる。炊きたてご飯と保温ご飯そのものの温度をはかってみると、前者が100度近いのに対し、後者は70度とかなり低かった。その差が、炒めたときに出てきたのだろう。