その5:バズワードを避けろ

スタートアップとベンチャーキャピタルの世界は、「破壊的」「バリュー・プロポジション」「パラダイムシフト」といったバズワードであふれている。ティールはこうしたバズワードを、ポーカーの「テル」を例に引いて説明する。

テルとは、プレーヤーの行動の変化や癖のことだ。それを見て、プレーヤーの手持ちの札を想像することもできる。手練のプレーヤーは、これを逆に利用してブラフをかける。バズワードを多用して煙に巻く連中がいたら要注意で、すでに類似のテーマを手がけている人間が背後に大勢いると考えていい。

ティールは将来のトレンドについて質問されることを嫌う。自分は予言者ではないし、そもそもトレンドというものは過大評価されていると彼は言う。バズワードを連発する人間に会ったらさっさと逃げたほうがいい。賢い投資家は自分だけの羅針盤を持っていて、万人が認めるメインストリームからは距離を置く。

その6:自分の足で立て

2002年にペイパルをイーベイに売却して、ティールは5500万ドルを手にした。文字どおり一夜にしてリッチになったわけだが、シリコンバレーではよくある話だ。ティールにとってこのカネはより大きな自由を意味していた。彼はこれを自社と、フェイスブックやパランティアのようなスタートアップに投資し、さらなる成長を遂げた。

ティールはシリコンバレーに戻ってからヘッジファンドを立ち上げ、自分が投資家に向いていると気づいた。必要な財力を得た彼は、もっとも得意でもっとも価値を創出できる仕事、すなわち投資にふたたび専念する。

その7:固い友情

ティールにとって最大の財産は、長年培ってきた固い友情だ。ティールはペイパルでもパランティアでも自分の投資会社でも、スタンフォード時代の友人と共に仕事をしている。

▼教訓
冷淡と思われがちなビジネスの世界に友情は似つかわしくなく、コーポレートガバナンスが厳しくなっている中で、「派閥」をつくることは否定的にとらえられがちだ。ティールの場合は、自らの経済的な自立性とビジネスモデルによって、こうしたやり方が許されている面はある。彼は自分のそばに気心の知れたパートナーがいるときに、力を発揮するのである。
ティールの投資7か条、いかがだっただろうか。ぜひみなさんも参考にしてほしい。
トーマス・ラッポルト(Thomas Rappold)
起業家、投資家、ジャーナリスト
1971年ドイツ生まれ。世界有数の保険会社アリアンツにてオンライン金融ポータルの立ち上げに携わったのち、複数のインターネット企業の創業者となる。シリコンバレー通として知られ、同地でさまざまなスタートアップに投資している。シリコンバレーの金融およびテクノロジーに関する専門家として、ドイツのニュース専門チャンネルn-tvおよびN24などで活躍中。他の著書に『Silicon Valley Investing』がある。
(撮影(ピーター・ティール)=Manuel Braun)
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