人々を愚鈍にするシステムを150年続けてきた
――最近の北朝鮮の核をめぐる東アジア情勢の劇的な変化などみていると、日本は一人、取り残されているのが露呈しています。
まったくのみそっかす。こんなバカな国には国際情勢の重大な次元に関わらせるべきでないというのが現実です。
なぜ、日本がここまで堕ちていったのかというと、「国体」という人々を愚鈍にするシステムを150年続けてきたからです。支配を否認させるのが、「国体」ですが、さっきも言ったように、支配と向き合い、抵抗するところからしか、知性は生まれない。支配を否認させる「国体」のせいで、幼稚で愚かな状態に落ち込んでしまったのです。
――近代の歴史を知らねばならないということですね。『国体論』では大きな歴史の見取り図が描かれています。
大きな見取り図から見ないと、歴史の因果関係がわからないのです。大きな“風呂敷”でくるむように捉えることで現実の見え方が違ってくると思います。
アメリカを頂点とする「国体」による弊害は、政治や社会のあらゆる場面でひずみとなって表出している。「この先の日本に待っているのは2度目の破局かもれしない」と白井は言う。それを回避するのは、品位のある知性しかない。それには近代の歴史を知り、学ぶことだと強調する。「国体」の抱える欠陥と向き合うことは、日本のこれからを切り開くための鍵なのだ。
政治学者、京都精華大学人文学部専任講師
1977年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。専攻は政治学・社会思想。『永続敗戦論 戦後日本の核心』で、石橋湛山賞、角川財団学芸賞、いける本大賞を受賞。近著に『国体論』(集英社新書)がある。