「改元の日はメーデー(労働者の日)ですよ」
「などてすめろぎは“平和の象徴”となりたまひし」(なぜ天皇陛下は“平和の象徴”になってしまわれたのか)
安倍晋三首相は、天皇皇后の「おことば」を聞くたびに、そうつぶやいているのではないか。天皇退位の日程が決まった。それを巡っても宮内庁と政治はバトルを繰り広げていたと、有識者会議で座長代理を務めた御厨貴が、朝日新聞(12月1日付)で語っている。
安倍官邸は当初、平成30年の大みそか、退位、元旦、即位・改元にしたかったが、これに宮内庁が抵抗した。年末年始には皇室行事が重なるから、3月末日退位、4月1日即位にしたいと主張して、その日程をメディアにリークしたのだ。
だが、今度は官邸がそれをひっくり返して、4月末日退位、5月1日即位にした。御厨も「改元の日はメーデー(労働者の日)ですよ」と驚いている。何としても宮内庁、その後ろにいる天皇・皇后のいいなりにはならないという、安倍の強い「決意」がうかがえる。
『週刊新潮』(12月14日号)は、侍従職関係者に、天皇の思いをこう代弁させている。
「陛下は、“心残りがあるとしたら……”という言葉を口にされています。具体的には、女性宮家を創設できなかったこと、そしてアジアで訪問していない国があること、ですね」
安倍首相は、女性宮家が固まれば、女性天皇の議論も深まることを恐れたのだといわれている。当然ながら、訪問していない国「韓国」に対しても、安倍はいい感情を持ってはいない。
天皇陛下のお気持ちは「忖度」しなかった
秋篠宮も、皇位継承のあり方という天皇が提起した問題がほとんど進んでいないことに言及して、「議論が進んでいない、確かに進んでいないのですけれども、そのこともやはりこれはある意味で政治との関係にもなってくるわけですね」と語っている。
天皇とは学習院初等科から高等科まで「ご学友」だった榮木和男も、こう話す。
「安倍政権になってからいろいろなことが進まなくなったという状況があって、陛下が焦りのようなものを感じておられたのは当然そうだと思います。自分たちが言いださないと、誰も何もしてくれないということがだんだんわかってこられた。それで、異例かもしれませんが、ああいう形の『お気持ち表明』になったんじゃないでしょうか」
天皇が政治的な発言をすることは憲法上制約されている。十分に知りながら、こうした発言をせざるを得なかった天皇の気持ちを、安倍は「忖度」することはなかった。