高額の報酬を獲得する人と、年収減で転職する人の2極化

ITエンジニアをはじめとするテクノロジー人材の年収はどれくらいアップするのか。人材紹介大手のロバート・ウォルターズ・ジャパンのデイビッド・スワン社長はこう語る。

写真はイメージです(写真=iStock.com/AH86)

「自動車メーカーなどの製造業では電気エンジニアと機械エンジニアのスキルを併せ持つエンジニアの需要が高い。財務の計画立案と財務データの分析を行うスペシャリスト、金融サービスではデータアナリストなどの需要が伸びています。専門性の高いスキルセットを持つ人材の供給が需要に満たないために、転職内定時提示される給与額が平均10~15%ほど前職に比べて高くなっています。とくにテクノロジーをともなう新興事業分野では20~25%アップするケースもある」

前出・藤井編集長も「ITエンジニアは若い人でも前職が400万円だった人が600万円に、500万円の人が1200万円に上がるケースもある」と語る。

前出の黒澤フェローもこうつけ加える。

「WEB系のサービスをハードからソフトまで全部作ることができるフルスペックエンジニアは年収1000万円台が多い。AIやデータサイエンス関連では人が不足しているために実務経験がない大学院出身者のニーズもある。若い人でも500~1500万円の間で転職している」

▼日本の大企業と外資系企業による熾烈な争奪戦

じつはこうした高度テクノロジー人材は日本の大手企業や外資系企業を巻き込んだ熾烈な争奪戦が展開されている。

その争奪戦に不利な状況にあるのが、外資系企業と違って年功的賃金制度が残る日本の大手企業だ。そこで高額の年収で人材を迎え入れるために主に2つの手法を講じている。

ひとつ目の手法は、既存のものとは別の賃金体系を持つ別会社に入社させる方法だ。黒澤フェローは「既存の部署だと給与の違いが社員間に軋轢を生むので専用の子会社を設置して数千万円の高い給与を支払っている大手企業もある」と指摘する。

ふたつ目は、契約社員として採用する方法だ。

「正社員ではないので給与体系にとらわれることもありません。職務と役割を限定した2年の契約を結び、1年間に2000万円を支払うケースもある」(藤井編集長)

デイビッド・スワン社長も契約社員採用に関してこう言う。

「高度専門人材を契約で調達する動きが増えています。その理由として、日本の年功序列賃金では給与の枠が限られているということ以外に、新規事業分野で正社員として過剰に雇用することを抑える狙いを企業側が持っていることも挙げられます。一方、求職者も受け取る給与が高いというメリットがあるので正社員よりも契約社員を選択する人が若い人ほど多い」

有能な外部人材を積極的に採用するために自社の賃金制度の中に「専門職専用の賃金テーブル」を設けると同時に、特別の部署に配置している大手電機メーカーも現れた。同社の人事担当者はその狙いについてこう語る。

「エレクトロニクス業界は変化が激しく、今は新しいデバイスとサービスを組み合わせていくことが競争の軸になっています。変化に対応するためにはAIやデータサイエンスなど専門のエンジニアを外部から受け入れていく必要がある。従来は、年齢と給与をある程度結びつけた制度でしたが、新たに専門職種のコースを設置し、役割を明確化し、それに基づいた給与を支払うことにしています。また、新規にイノベーション開発部門を設置しました。その結果、市場価値に連動した形で給与をオファーできるようになり、実際に多くの外部人材が活躍しています」

同社は3年前からこの取り組みをスタートし、毎年数百人単位で専門人材を採用している。

活況を呈する転職市場だが、その内実は一部の高額の報酬を獲得する人たちと、年収減で転職する人たちの2極化が進行している。

(写真=iStock.com)
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