高齢者の恋愛はハッピーエンドにはならない
では、内縁関係の場合、相続問題は起きないのでしょうか。
内縁とは、一緒に生活しているなど事実上は婚姻関係にあるものの、婚姻届が未提出で、法律上では配偶者として認められていない妻や夫のことです。内縁関係の場合、財産分与などの権利は発生しますが、相続権は発生しません。つまり内縁の妻は法定相続人と認められていないのです。
ただし注意は必要です。
内縁関係になると「もしものことがあったら、私に少しは遺して」などと言って遺言書を書かせる可能性があるからです。小説『後妻業』に登場する女性も公正証書遺言を内縁男性に書かせることで遺産をわが物にしていました。遺産目当てで異性に近づく人はそうした悪知恵が働くのです。だから「相続問題でもめるのは嫌だから、安易に遺言書なんか書かないで」と恋愛を楽しむ親にクギをさしておくことも必要です。ただ、好きな相手にそんなことを言われたらつい書いてしまうのも人間で、それが原因で、あとでトラブルになるケースもあります。
▼相手への執着心でストーカー化するケースも
ケアマネのMさんは、相談者のSさんにもうひとつアドバイスしたそうです。
「私が見てきた高齢者の恋愛で、ハッピーエンドで終わったケースは残念ながらほとんどありません。人生の最後で見つけた相手という思いがあるのか、執着が強いからです。どちらかが執着心に駆られるとふたりの間に温度差が生じトラブルに発展する。ストーカーのような異常行動に走る人もいます。ですから、籍は入れない、遺言書も書かないということをお父さんに言ったうえで注意深く見守っていてください。時間が問題を解決してくれる可能性はあります。そう伝えました」
今後、高齢者の増加に比例して、こうした恋愛問題も顕在化していくでしょう。身近でそうしたことが起こっても慌てないよう、子供世代は心の準備をしておいたほうがよさそうです。