その朝原さんから、とても興味深いお話を伺った。100メートル走は、「よーいドン」で走るシンプルな競技だが、強くなるためには、最初はいろいろな競技を経験するのがよいのだという。

100メートル走はよくわかっていなかった

朝原さんの場合は、中学校のときにハンドボールで活躍し、レギュラーとして全国大会にも出場した。その後に陸上へ転じたが、最初は走り幅跳びの選手だった。

朝原さんのお話は、固定観念を破るための方法論について、貴重な示唆を与えてくれる。直接の目標だけでなく、関係するさまざまなことを経験して、感覚を研ぎ澄まし、身体能力を高めることが大切なのだ。

朝原さんが短距離走の選手として注目されたのは、大学在学中の国体で、当時の日本記録を出して優勝してからのことである。

1996年のアトランタ・オリンピックでは、ご本人曰く、日本陸連からもあまり期待されないうちに、準決勝まで残ってしまった。100メートル走はよくわかっていなかったので、周囲に凄い選手がいることも知らなかったという。「和製カール・ルイス」と呼ばれた朝原さんらしい、豪快なエピソードだ。

人生、どんなことも回り道ではない。無駄と思えることもやってこそ、「裾野」を広げ、「ピーク」を高めることができる。100メートル走も、ビジネスも同じである。

(写真=AFLO)
関連記事
脳科学者「走ると記憶が整理されていく」
練習時間が短くても強い"東大選手"の秘密
学校の勉強は"ビジネス"に役立たないのか
"箱根駅伝は無敵"青学生が燃え尽きる理由
"東京五輪"を過去のノスタルジーで語るな