自分で解決する意志こそが大事
藤井四段が通った幼稚園で採用されていたのが、イタリア発祥の教育法・モンテッソーリ教育である。登園した子どもたちは、はさみを使ったり、カードの絵をあわせたり、“お仕事”と呼ばれる日常生活の練習や教具を使った活動に取り組む。
特徴は、やりたい“お仕事”を自ら自由に選べること。この学年では何を習うといった固定的なプログラムが用意されているわけではない。
「大人には無意味に見えても、子どもがやりたいと思って取り組んでいることこそ、発達課題であることが多いものです。子どもには自ら育つ力が備わっている、というのが教育の前提です」と、日本モンテッソーリ教育綜合研究所・主任研究員の櫻井美砂氏は説明する。あくまで大人は成長するために援助する存在という位置づけ。誤っていても、あえてすぐには修正しないこともある。
「大事なのは、答えへの最短距離を覚えることではなく、自分で解決しようとする意志力や思考力を育むこと。すぐに介入すると、判断する前に大人を頼り、自分で考える姿勢が失われてしまいます」(櫻井氏)
藤井四段の両親は、将棋に関してほとんど口出ししなかったという。
○ 見守られることで自立
× 叱られることで萎縮
押さえつけず、見守る姿勢が自立を促す
子どもに大人が過度な介入をすると、「判断する前に大人を頼って、自分で考える姿勢が失われてしまいます」(櫻井氏)。そうならないため、モンテッソーリ教育では、子どもには子どもの価値観があり、大人とは別の人間と認識するように心がけている。「同じことが上司・部下の関係にも言えるでしょう。部下だからといって何でも言っていいわけではなく、考えは尊重する。見守り、最終的な責任を取ってあげると、成長が促されます。」(同)