ビジネス環境の改善受け投資の拡大も期待
冒頭に説明したように、ビジネス環境の改善を受けた投資の拡大も期待できる。
2017年に成長率を押し下げたGSTの導入についても、もともとの狙いは、税制の簡素化に伴う納税コストの減少、州をまたぐ最適なサプライチェーンの構築を通じた生産性向上・インフレ抑制、対内直接投資の増加、などを通じて景気を押し上げることであった。導入時に混乱を招いたのは、新税制に対応したITシステムの導入や納税に関わる職員のトレーニングの必要性など追加的な企業負担を伴ったからに過ぎない。
これらの一連の改革を受け、世界銀行は、2017年10月末に発表した最新のビジネス環境調査のランキングで、インドを前年の130位から100位に引き上げた(図表2)。インドは、もともと総人口13億人、平均年齢25歳という若くて巨大な潜在市場を持っているため、近年の事業環境の改善は多国籍企業にとってインド進出に対する関心を高める要因になるだろう。
2019年度に下院総選挙を控え、政治面からのバックアップも期待できる。今後発表される2018年度の予算案では、輸送・エネルギーインフラ開発や農村開発などに配慮した予算編成が行われるとみられる。これまで打ち出してきた「メイク・イン・インディア」、「デジタル・インディア」、「スキル・インディア」などの政策の実現に向けた新たな施策も打ち出され、インド国内で活動する企業の経営環境を改善することになるだろう。
経済改革ペースが加速し消費・投資マインドを刺激
さらに、モディ政権の政治基盤が一段と安定化するため、経済改革の進捗ペースが加速しそうである。インドの議会制度は2院制を採用しており、下院ではモディ首相が率いるインド人民党(BJP)を中心とした与党連合が過半数を占めている。
一方、上院での議席は3割程度にとどまっており、経済改革に向けた法案が上院を通過することが困難な状況が続いていた。上院の議席は2年ごとに3分の1ずつ改選される制度であるため、両院間のねじれが解消するようになるまでには、相当の時間がかかると見込まれていた。
しかし、一部の野党が政権支持派へ転向したため、2018年中にも与党連合が上院で過半数を占める可能性が高まってきている。さらに、上院議員は州議会を通じて選出されるが、2017年12月に2州(グジャラート州、ヒマチャルプラデシュ州)で行われた州議会選挙ではBJPが単独過半数の議席を獲得し、モディ政権支持の流れが続いていることを示した。2018年中には全29州のうち8州で議会選挙が予定されており、ここでBJPが議席を伸ばすことができれば、経済改革に向けた機運が一段と高まることになる。これは、国内の消費・投資マインドを改善することになるだろう。